tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

BOOK REVIEW

『スケルトン・キー』道尾秀介

スケルトン・キー (角川文庫)作者:道尾 秀介KADOKAWAAmazon 19歳の坂木錠也(さかき じょうや)は、ある雑誌の追跡潜入調査を手伝っている。 危険な仕事ばかりだが、生まれつき恐怖という感情が欠如した錠也にとっては天職のようなものだ。 天涯孤独の身の上で…

『本と鍵の季節』米澤穂信

本と鍵の季節 (集英社文庫)作者:米澤 穂信集英社Amazon 堀川次郎、高校二年で図書委員。不人気な図書室で同じ委員会の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、本には縁がなさそうだったが、話してみると快活でよく笑い、ほどよく…

『東京ホロウアウト』福田和代

東京ホロウアウト (創元推理文庫 M ふ)作者:福田 和代東京創元社Amazon 夏季オリンピック開催間近の東京で、新聞社に「開会式の日、都内を走るトラックの荷台で青酸ガスを発生させる」という予告電話がかかってきたのが、すべての始まりだった。直後、配送ト…

『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき

昨日がなければ明日もない (文春文庫 み 17-15)作者:宮部 みゆき文藝春秋Amazon 「宮部みゆき流ハードボイルド」杉村三郎シリーズ第5弾。 中篇3本からなる本書のテーマは、「杉村vs.〝ちょっと困った〟女たち」。 自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家…

『ひとつむぎの手』知念実希人

ひとつむぎの手 (新潮文庫 ち 7-72)作者:知念 実希人新潮社Amazon 大学病院で激務に耐えている平良祐介は、医局の最高権力者・赤石教授に、三人の研修医の指導を指示される。彼らを入局させれば、念願の心臓外科医への道が開けるが、失敗すれば……。キャリア…

『ひと』小野寺史宜

ひと (祥伝社文庫)作者:小野寺史宜祥伝社Amazon 女手ひとつで僕を東京の私大に進ませてくれた母が、急死した。 僕、柏木聖輔は二十歳の秋、たった独りになった。大学は中退を選び、就職先のあてもない。 そんなある日、空腹に負けて吸い寄せられた砂町銀座商…

『アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン』小路幸也

アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン (集英社文庫)作者:小路 幸也集英社Amazon 下町の朽ち果てそうな日本家屋で「東亰バンドワゴン」という古書店を営んでおります。店主の堀田勘一は孫の青が実の母親である池沢百合枝さんと映画で共演することになっ…

『神のふたつの貌』貫井徳郎

神のふたつの貌 (文春文庫 ぬ 1-9)作者:貫井 徳郎文藝春秋Amazon ――神の声が聞きたい。 牧師の息子に生まれ、一途に神の存在を求める少年・早乙女。 彼が歩む神へと到る道は、同時におのれの手を血に染める殺人者への道だった。 三幕の殺人劇の結末で明かさ…

『魔力の胎動』東野圭吾

魔力の胎動 (角川文庫)作者:東野 圭吾KADOKAWAAmazon 成績不振に苦しむスポーツ選手、息子が植物状態になった水難事故から立ち直れない父親、同性愛者への偏見に悩むミュージシャン。 彼等の悩みを知る鍼灸師・工藤ナユタの前に、物理現象を予測する力を持つ…

『かがみの孤城』辻村深月

かがみの孤城 上 (ポプラ文庫 つ 1-1)作者:辻村 深月発売日: 2021/03/05メディア: 文庫かがみの孤城 下 (ポプラ文庫 つ 1-2)作者:辻村 深月発売日: 2021/03/05メディア: 文庫 学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の…

『祈りのカルテ』知念実希人

祈りのカルテ (角川文庫)作者:知念 実希人発売日: 2021/02/25メディア: 文庫 諏訪野良太は、純正会医科大学附属病院の研修医。初期臨床研修中で、内科、外科、小児科、産婦人科など、様々な科を回っている。ある夜、睡眠薬を大量にのんだ女性が救急搬送され…

『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』倉知淳

豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件 (実業之日本社文庫)作者:倉知 淳発売日: 2021/02/05メディア: 文庫 戦争末期、帝國陸軍の研究所で、若い兵士が倒れていた。屍体の周りの床には、なぜか豆腐の欠片が散らばっていた。どう見ても、兵士は豆腐の角に頭を…

『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』辻真先

深夜の博覧会 (昭和12年の探偵小説) (創元推理文庫)作者:辻 真先発売日: 2021/01/28メディア: 文庫 昭和12年(1937年)5月、銀座で似顔絵描きをしながら漫画家になる夢を追いかける那珂一兵のもとを、帝国新報(のちの夕刊サン)の女性記者が訪ねてくる。開催中…

『ブロードキャスト』湊かなえ

ブロードキャスト (角川文庫)作者:湊 かなえ発売日: 2021/01/22メディア: 文庫 町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の県大会、わずかの差で出場を逃してしまう。その後、陸上の強豪校、青海学院高校に入学した…

『風神の手』道尾秀介

風神の手 (朝日文庫)作者:道尾 秀介発売日: 2021/01/07メディア: 文庫 遺影専門の写真館「鏡影館」。その街を舞台に、男子小学生から死を目前に控えた老女まで、様々な人物たちの人生が交差していく――。 数十年にわたる歳月をミステリーに結晶化する、技巧と…

『インフルエンス』近藤史恵

インフルエンス (文春文庫 こ 34-6)作者:近藤 史恵発売日: 2021/01/04メディア: 文庫 大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨。同じ団地に住む里子が、家族内で性虐待を受けていたことを知り、衝撃を受ける。助けられなかったという自責の念を胸に抱えたま…

『新章 神様のカルテ』夏川草介

新章 神様のカルテ (小学館文庫)作者:草介, 夏川発売日: 2020/12/08メディア: 文庫 栗原一止は、信州松本に住む実直にして生真面目な内科医である。「二十四時間、三百六十五日対応」の本庄病院を離れ、最先端の医療を行う信濃大学病院に移り早二年。患者六…

『コロッサスの鉤爪』貴志祐介

コロッサスの鉤爪 (角川文庫)作者:貴志 祐介発売日: 2020/11/21メディア: 文庫 何者かに海中深くへ引きずり込まれた元ダイバー。無残な遺体には鉤爪で付けられたかのような不審な傷が残されていた。現場は、ソナーで監視され、誰も近づけないはずの“音の密室…

『ミステリークロック』貴志祐介

ミステリークロック (角川文庫)作者:貴志 祐介発売日: 2020/11/21メディア: 文庫 人里離れた山荘での晩餐会。招待客たちが超高級時計を巡る奇妙なゲームに興じる最中、山荘の主、森怜子が書斎で変死を遂げた。それをきっかけに開幕したのは命を賭けた推理ゲ…

『さざなみのよる』木皿泉

さざなみのよる (河出文庫)作者:木皿泉発売日: 2020/11/05メディア: 文庫 富士山の間近でマーケットストア「富士ファミリー」を営む、小国家三姉妹の次女・ナスミ。一度は家出をし東京へ、のちに結婚し帰ってきた彼女は、病気のため43歳で息をひきとるが、そ…

『ヴェネツィア便り』北村薫

ヴェネツィア便り (新潮文庫)作者:北村 薫発売日: 2020/10/28メディア: 文庫 「もし、あなたがこれを読む時、ヴェネツィアがもうないなら、これは、水の底から届いた手紙ということになります」「ヴェネツィアは、今、輝く波に囲まれ、わたしの目の前にあり…

『崩れる脳を抱きしめて』知念実希人

崩れる脳を抱きしめて (実業之日本社文庫)作者:知念 実希人発売日: 2020/10/08メディア: 文庫 広島から神奈川の病院に実習に来た研修医の碓氷は、脳腫瘍を患う女性ユカリと出会う。外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれる碓氷。心に傷をもつふたりは次第…

『宿命と真実の炎』貫井徳郎

宿命と真実の炎 (幻冬舎文庫)作者:貫井 徳郎発売日: 2020/10/07メディア: 文庫 幼き日に、警察に運命を狂わされた誠也とレイ。大人になった二人は、彼らへの復讐を始める。警察官の連続死に翻弄される捜査本部の女性刑事・高城理那は、かつて“名探偵”と呼ば…

MY BEST BOOKS OF THE YEAR 2020

あけましておめでとうございます! 昨年は誰にとっても大変な年だったと思いますが、今年は明るい光が差す1年になることを祈っています。 さて、毎年年末に投稿していた、私の年間読了本ベスト10発表企画ですが、2020年分はこうして年明けにタイミングを変更…

『盤上の向日葵』柚月裕子

盤上の向日葵(上) (中公文庫)作者:柚月 裕子発売日: 2020/09/24メディア: 文庫盤上の向日葵(下) (中公文庫)作者:柚月 裕子発売日: 2020/09/24メディア: 文庫 平成六年、夏。埼玉県の山中で白骨死体が発見された。遺留品は、名匠の将棋駒。叩き上げの刑事…

『マスカレード・ナイト』東野圭吾

マスカレード・ナイト (集英社文庫)作者:東野 圭吾発売日: 2020/09/18メディア: 文庫 練馬のマンションの一室で若い女性の他殺体が発見された。ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティに犯人が現れるという密告状が警視庁に届く。新田浩介は潜入…

『その裁きは死』アンソニー・ホロヴィッツ / 山田蘭 (訳)

その裁きは死 (創元推理文庫)作者:アンソニー・ホロヴィッツ発売日: 2020/09/10メディア: 文庫 実直さが評判の弁護士が殺害された。裁判の相手方が口走った脅しに似た方法で。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた謎の数字“182”。被害者が殺される直前に残し…

『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ

そして、バトンは渡された (文春文庫)作者:まいこ, 瀬尾発売日: 2020/09/02メディア: 文庫 幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は二十歳しか離れていない“父”と暮らす。血の繋が…

『カーテンコール!』加納朋子

カーテンコール! (新潮文庫)作者:加納 朋子発売日: 2020/08/28メディア: 文庫 閉校が決まった私立萌木女学園。単位不足の生徒たちをなんとか卒業させるべく、半年間の特別補講合宿が始まった。集まったのは、コミュ障、寝坊魔、腐女子、食いしん坊…と個性豊…

『神の島のこどもたち』中脇初枝

神の島のこどもたち (講談社文庫)作者:中脇 初枝発売日: 2020/08/12メディア: 文庫 青い空を沖縄に向かって飛ぶ特攻機、天国のように美しい海には死んだ兵隊さんが浮かぶ。第二次大戦末期、小さな島沖永良部島に暮らすマチジョーとカミは、大切な家族を失い…