tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)


嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ! 奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス!

いまや直木賞候補の常連になり、押しも押されぬ人気作家の伊坂幸太郎さん。
ですが私は今まで伊坂作品に手を出せずにいました。
本当は『アヒルと鴨のコインロッカー』が気になるけれど、まだ文庫落ちする気配はないし、現在文庫で読める作品のあらすじを読んでもなんだかわけが分からなくて読もうという気にならなかったんですよね。
例えばデビュー作『オーデュボンの祈り』のあらすじはこんなの↓

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!

ほらね、わけ分かんないでしょ(笑)
こういうシュールな作品は相性が合わないときはとことん合わないからなぁ。
そんなわけでちょっと敬遠気味だったのですが、『陽気なギャングが地球を回す』はあらすじが比較的まとも(笑)だったのでようやく手を出すことができました。
そしたら…いやいや、なかなか面白いじゃないですか!


なんと言っても主人公たちが銀行強盗の一団というのが斬新。
しかも「ギャング」のイメージを覆すようなスマートさ、かっこよさ。
やってるのは犯罪行為なのに、この作品の中で果たしている役割は探偵役のような、正義の味方のような。
犯罪者なのにいいのかしら(笑)
この一団は4人組ですが、それぞれ個性と特技がはっきりしていて、バラバラなように見えて実はチームワークもバッチリ。
銀行強盗に成功したと思いきや、その逃走中に思わぬ出来事に遭遇してしまいますが、いくつかの謎から真実に迫っていき、最後に敵をギャフンと言わせる(死語?)のがなんとも痛快で気持ちよかったです。
物語の中のあちこちに散りばめたいろんな「ネタ」や伏線を、最後にきちんと全部回収しているのも心憎い。
文章もテンポがよくて読みやすかったです。
特にギャングたちの会話にはところどころで笑わされました。
頭を空っぽにして楽しめる快作です。
☆4つ。