tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『Twelve Y.O.』福井晴敏

今日は福井晴敏さんの誕生日です。
そんな日にこの本を読み終わったのもなんだか不思議な縁なのかもしれません。

Twelve Y.O. (講談社文庫)

Twelve Y.O. (講談社文庫)


電子テロリスト「12(トゥエルブ)」とは何者か!?


沖縄から米海兵隊が撤退した。
それは米国防総省(ペンタゴン)が、たった1人のテロリストに屈服した瞬間だった。
テロリストの名は「12」。
最強のコンピュータウィルス「アポトーシス2」と謎の兵器「ウルマ」を使い、米国防総省を脅迫しつづける「12」の正体は?
真の目的は?
圧倒的スケールの江戸川乱歩賞受賞作。

太平洋戦争後の日本の防衛政策や、アメリカの軍事政策、自衛隊の存在価値などの問題に鋭いメスを入れる作品。
私にとってはあまり今まで読んだことのないジャンルの小説だったので、読むのにものすごく時間がかかってしまいました。
用語集が欲しかった…。
正直、読み終わった今も、この作品を100%完全に理解できたという自信は全くないのですが、壮大なスケールのアクション小説としても、日米の軍事・防衛問題を考えさせる社会派小説としても、非常に完成度の高い作品だなと思いました。
これがデビュー作(正確には『川の深さは』の方が先ですが)というのだからすごいですよね。
文章も物語のスケールに見合うダイナミックで生き生きとした描写が光っています。
すごい作品だというのは分かったのですが…私の好みにはちょっと合わなかったみたいです。
男性の登場人物はみなかなり熱く描かれていましたが、行動や考え方が私には理解できなかったし、共感しづらかった。
特にテロリスト「12」は、なんか結局は個人的で身勝手な理由で動いていたんじゃないかという気がしました。
坂部夫妻はよかったですね。
この二人はちょっと他の登場人物たちとは異質な感じの温かみがあって、血なまぐさい物語のよいアクセントになっていたと思います。
それから、軍隊や武器に関する薀蓄が満載で、福井さんは本当にこういう世界が好きなんだなというのは伝わってきましたが、ちょっとマニアックすぎて私にはついていけませんでした。
米国国防総省との電子テロ戦というのはなかなか面白かったですけど。
日本が戦後アメリカの言いなりになって飼いならされてきた12歳の子どもだ、という考え方には共感するところもありますけど。
文章力も構成力もあり読ませますが、かなり好みが分かれる話であるのは確かだと思います。


ところで福井晴敏さんは、自分の作品のファンサイトを運営している女性と結婚されたそうですね(某雑誌に載ってました)。
かなりよく福井さんの作品を理解されていることに福井さんが感心して、メールを送ったところから交際が始まったのだとか。
有名人と結婚したい人は、気合を入れてファンサイトを作るとよいかもしれない(笑)