tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ZOO 2』乙一

ZOO 2 (集英社文庫)

ZOO 2 (集英社文庫)


天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集その2。目が覚めたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の悲喜劇(「血液を探せ!」)、ハイジャックされた機内で安楽死の薬を買うべきか否か?(「落ちる飛行機の中で」)など、いずれも驚天動地の粒ぞろい6編。文庫版だけのボーナストラックとして、単行本に入っていなかった幻のショートショート「むかし夕日の公園で」を特別収録。

「1」に引き続き、ホラーっぽいのあり、SFっぽいのあり、ミステリっぽいのありで、乙一ワールド全開の「2」です。
この「2」も個性的な作品ぞろいですが、特に印象に残っているものをいくつか挙げてみます。
まず、「血液を探せ!」。
いきなり主人公が腹を刺されて死にそうになっているという緊迫感のある(ハズの)設定でありながら、全く差し迫った感じがないというか、マイペースな登場人物たちのとぼけた会話に思わず笑ってしまいました。
ある意味バカミス??
「Closet」は乙一さんらしいミステリですね〜。
倒叙ものと思わせて実は…という展開が好きです。
「血液を探せ!」と同じような緊迫した状況における差し迫った感のない登場人物の会話が笑えるのが「落ちる飛行機の中で」。
ラストのなんともいえないやりきれなさもいいですね。
怖い、というかエグイのが「冷たい森の白い家」と「神の言葉」です。
状況を想像するととっても気持ち悪いし怖いのに、文章にはどことなく切なさが漂っていて、これぞ乙一ワールド!という感じです。


でも、やっぱり「1」を読んだときに感じた物足りなさをこの「2」でも感じてしまいました。
個々の作品を見ればどれもそれなりに水準の高い作品だと思うのですが、やっぱり何かこう、ガツンと来るものがないのですね。
読み終わったときの満足感が、他の乙一作品に比べると少し低かったです。
う〜ん、やっぱり乙一さんは『失踪HOLIDAY』とか『きみにしか聞こえない』あたりの路線の方が好きだなぁ。
作品として悪いわけではなく、単純に私の好みの問題なのでしょうけど。
☆4つ。