『流星ワゴン』重松清

流星ワゴン (講談社文庫)

38歳、秋。
ある日、僕と同い歳の父親に出逢った。
僕らは、友達になれるだろうか？
死んじゃってもいいかなあ、もう……。
38歳・秋。
その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。
そして自分と同い歳の父親に出逢った。
時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。
やり直しは、叶えられるのか？
「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

はまぞう君にレビュー機能がつきましたが、私はよい作品ほど長文を書きたくなってしまうのでこの機能は使いません。
でも5段階評価の投票はいつも大体やってるので、今回から星の数もレビュー内に明記したいと思います。
ご参考になりますように。

さて、本書はちょうど読む本がなくなったときにぶらりと立ち寄った書店で何も考えずに「人気作家の話題の作品だし…」くらいの軽い気持ちで手に取りました。
重松清さんの作品は今まで『エイジ』が朝日新聞に連載されていたのを読んだことしかなかったのです。
が。
この作品にはやられました…。
無性に泣ける。
最初から最後まで切なさで胸がいっぱいの状態。
最後はもう号泣。
泣きすぎて頭が痛くなってしまいました(笑)
一体なぜこんなに泣けるのでしょう。
主人公は38歳の中年親父。
奥さんは外泊するは、息子は中学受験失敗を機に不登校になり引きこもって家庭内暴力を振るうは、自分自身はリストラされて職を失うは、とまさに人生のどん底、全く冴えない情けない親父です。
私とは共通点はほとんどないと思うのですが、なぜかものすごく感情移入してしまい、彼が「あの時こうしていればよかった」という数多くの後悔にいちいち共感し、涙を流していました。
本当に不思議。
どうしてこんなにのめりこめたんだろう。
自分でもよく分かりません(笑)

家庭崩壊寸前、人生の最悪の状況に陥り、もう死んでもいいと思い始めていた主人公の元に現れたのは、5年前に交通事故で亡くなった父子の乗るワインレッドのオデッセイ。
その不思議な親子が主人公を連れて行ってくれるのは、人生の岐路であったことに気付かず通り過ぎてしまった「大切なとき」。
再び大切な過去をやり直す機会を与えられた主人公は、自分の無力さや情けなさに傷つき、苦しみ、悩み、後悔しながら、心を通わすことができなかった息子との関わり方を見つけ、故郷に背を向けずっと嫌ってきた父の気持ちを知って行きます。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を髣髴とさせる設定で、荒唐無稽なファンタジーの体裁をとってはいますが、ありがちなご都合主義ではありません。
重松さんはそんなに甘い展開は見せてくれない。
けれども、ほんの一条の希望の光が見えるラストがすがすがしく、感動的です。
過去を変えることはできない。
でも、過去を見つめなおし、反省した結果を生かして未来を変えていくことはできるかもしれない。
読み終わったときに前向きに生きる勇気が湧いてくる作品でした。
文句なしに星5つ！！