tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『永遠の仔 第1巻 再会』天童荒太

永遠の仔〈1〉再会 (幻冬舎文庫)

永遠の仔〈1〉再会 (幻冬舎文庫)


霊峰の頂上で神に救われると信じた少女・久坂優希と二人の少年は、下山途中優希の父を憑かれたように殺害する。
十七年後、再会した三人を待つのは……。
文学界を震撼させた大傑作、文庫化!

4年前に出版されて大ベストセラーとなり、TVドラマ化もされた話題作がついに文庫化され、早速読み始めました。
私はドラマも見ていなかったので、虐待に関する話だということくらいしか知らずに読み始めたのですが、…痛い。
痛すぎる。
自分の人生をめちゃくちゃにしたのは親なのに、それでもその親の愛情を、大人になっても求め続ける、求めずにはいられない子どもたち。
記憶の奥底に封じ込めておかずにはおられない、大切な人にすら嘘をつかなくてはならない過去や心の傷を抱えて生きて行かねばならないというのは、あまりに不幸だ。
虐待の詳細を具体的に細かく描写するのではなく、何気ない文章から読者に想像させる手法が上手く、またそれが逆に読むのを辛くさせます。
例えば、主役の少年の1人である子どものあだ名「ジラフ」(英語で「キリン」)が、裸を人に見られることを激しく拒絶する彼の、身体に残されたある特徴からつけられたものである、など…。
主人公の少女、優希が児童精神科に入院するきっかけとなった事件を引き起こしたものが一体何であったのか、この1巻の時点でははっきり書かれていませんが、なんとなく想像はつきます。
これ、ドラマはかなり原作に忠実なものだったそうですが、だったらかなり見るのも辛かったんじゃないのかなぁ。


全5巻だということですが、これからまだまだ痛いことがいっぱい起こりそうな気配です。
痛いけど、辛いけど、でも読まずにはいられない。
う〜ん、これは結末次第では今年読んだ本ベスト1になるかもしれない、そんな気がします。