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tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ここはボツコニアン2 魔王がいた街』宮部みゆき


双子の「長靴の戦士」ピノとピピは、かつて魔王の居城があった街アクアテクを舞台に、〈ボツコニアン〉の世界の謎に果敢に挑む。さらにパワーアップした宮部みゆきのお気楽極楽ファンタジー第2弾!

宮部さんのやりたい放題ゆるゆるファンタジー、「ボツコニアン」シリーズの2作目。
物語の中にいきなり作者が乱入したり、その作者が本筋から脱線しまくってゲームや映画やドラマシリーズの話をしちゃったり、と相変わらず好き放題やっていますが、この2巻はようやく物語が本格的に始まった感じがして、個人的には1巻より飛躍的に面白くなったと思いました。


1巻はゲームで言うところのチュートリアルという感じで、主人公のピノとピピ (ふたり合わせて「ピノピ」のコンビ名がかわいい) の登場から始まって、ボツコニアンの世界観等の各種設定の説明がメインだったので、まさしく新しいゲームを始めて、徐々にその世界に慣れていく感覚でした。
それが2巻になると、新キャラは登場するし、ピノピも武器や魔法を手に入れてちょっとは戦士らしくなってきたし、ふたりがやって来た街アクアテクは賑やかでなかなか楽しそうだし、魔王伝説やら回廊図書館やらといったファンタジー要素もバンバン登場してきたし、本格的なボス戦も!――と一気に話が盛り上がってきました。
特にアクアテクという街が魅力的でいいですね。
「ベニスとニースとジュネーブを足して三で割ったみたいな感じ」とのことですが、火山湖のほとりにあって温泉が湧いていて、リゾートにぴったりの街だなんて、なかなか素敵じゃないですか。
ゲームだと訪れた街がいきなり魔物に滅ぼされていたり、そこまで行かなくても事件や災厄に見舞われて荒廃していたり、なんてこともよくあって、ゲームの中の話ながらどんよりとした気分になることもありますが、とりあえず本作ではまずは楽しい街にたどり着いてよかったよかったとホッとしました。
ボツネタでできた世界「ボツコニアン」とはいえ、冒険の舞台は楽しくあってほしいですからね。
この街で少女失踪事件が起きているらしいことにピノピが気づくくだりなどは、まさにゲーム内で新しいイベントが始まる予感がするのと同じでワクワクしました。
さすが宮部さん、RPGのツボをしっかり押さえています。


アクアテクはその昔、魔王がいたという伝説が残る街なのですが、この作品における魔王の描き方はなかなか面白いです。
ドラクエなんかだと、魔王といえばラスボスというイメージが強いですが、どうもボツコニアンの魔王はそれほど悪者ではないみたいなのです。
それどころか、魔王はボツコニアンを守っている存在らしい。
ピノピはボツコニアンを改善してほしいとお願いするために魔王に会いに行くのであって、別に戦いを挑みに行くわけではないようです。
――と言いつつ、最終的に戦闘になる可能性もあるのでしょうけれど。
ただ、魔王というだけあって、そう簡単に会いに行けるわけではなく、まずは回廊図書館の鍵と「伝道の書」を集める必要があるということが明らかになりましたが、何かを集めると道が開けるというのはいかにもファンタジーっぽくていいですね。
旅の目的がはっきりすると、物語としても分かりやすくなり、先の展開が楽しみになります。
魔王がどんな風に登場するのかも気になるところです。


アクアテクのボスを倒し、事件を解決するというRPGらしい展開を経た後の話が、お菓子の「あんまん」をめぐる話だというのは、脱力系ファンタジーの本領?発揮といったところでしょうか。
しかもこの話は次巻につながって、三国志ネタに突入するようです。
さすがボツネタの世界、世界観がめちゃくちゃで笑ってしまいます。
宮部さんが描く三国志 (ゲーム風)……一体どんな風になるのでしょうか。
続きが楽しみです。
☆4つ。


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