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tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『3652 伊坂幸太郎エッセイ集』伊坂幸太郎

3652: 伊坂幸太郎エッセイ集 (新潮文庫)

3652: 伊坂幸太郎エッセイ集 (新潮文庫)


エッセイが得意ではありません―。自らはそう語る伊坂幸太郎がデビュー以来ぽつぽつと発表した106編のエッセイ。愛する小説、映画、音楽のこと。これまた苦手なスピーチのこと。憧れのヒーローのこと。趣味を語る中にも脈々と流れる伊坂的思考と、日常を鮮やかに切り取る文体。15年間の軌跡を辿った、初のエッセイ集。裏話満載のインタビュー脚注に加え、幻の掌編2編を収録。

あまりノンフィクション作品は読まない私ですが、伊坂さんのエッセイ集は『仙台ぐらし』(こちらも集英社から文庫が出たようです)がなかなか面白かったというのと、初版にはおまけのショートストーリーも封入ということで、手に取ってみました。


『仙台ぐらし』は伊坂さんの日常生活に関するエッセイが多くて、読み終わる頃には伊坂さんのご近所さんになったような気分になりましたが、本作は「作家」という立場から書かれた文章が多くて、また違う角度から伊坂さんの人となりを知ることになりました。
伊坂さんが好きな本、映画、音楽などの話題が多く、なるほどこういったものから影響を受けてこられたんだなぁと、興味津々で読みました。
特に大江健三郎さんの『叫び声』という作品は、何度も取り上げられているので当然気になってきます。
純文学は苦手な私ですが、伊坂さんがこれほどまでに思い入れを持っている作品であるなら読んでみたいなぁという気になりました。
もちろん、赤川次郎さんや島田荘司さん、「マガーク探偵団」シリーズなど、私もよく知っている作家や作品が登場すると、とてもうれしい気持ちになります。
読書好きにとって、自分と同じ読書体験をしてきた人を発見すると、もうそれだけでその人に親近感を持ってしまいますが、まさにそんな感覚でした。


伊坂さんによる「小説論」とも言える文章もとても面白いと思いました。
私が一番共感できたのはこれです。

「映画と漫画」は映像を「見せてしまう」という点で同じジャンルですが、そういう意味で言うと、「小説」は「音楽」の仲間ではないでしょうか?
映像はないので、自分で想像するしかありません。言葉によってイメージが喚起されて、リズムやテンポを身体感覚で味わう、という点で、同じような気がします。書かれている (もしくは歌われている) テーマなんてどうでもいいんです。読んで (聴いて)、ああ気持ちよかった、と思えるものが最高なんじゃないでしょうか。


74ページ 5行目~12行目より

小説と音楽は似たところがある、と私もなんとなく感覚的に思ってきたのですが、それを伊坂さんがうまく言語化してくれたという感じです。
他に、純文学と大衆小説の違いを旅に例えて説明している文章も、とても面白い考え方だなと思いました。


エッセイはやはり気楽に軽く読めていいですね。
伊坂さんの文章が優しく丁寧なので、とても気持ちよくするすると読めました。
これからはエッセイに限らず、もう少しいろいろなジャンルのノンフィクションも読んでいきたいと思います。
☆4つ。


●関連過去記事●tonton.hatenablog.jp