tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『じんべえ』あだち充

じんべえ (小学館文庫 あ 1-1)

じんべえ (小学館文庫 あ 1-1)


高梨陣平は、愛する妻に先立たれ、今は血のつながらない高校生の娘・美久と二人暮らし。陣平は、年頃の美久が心配でたまらない。ん? それは親として? それとも…!? 親子であって、親子でないという、微妙な関係…。

久々に漫画を読んだなぁ…。
とは言え漫画文庫なので古い作品ですが(^_^;)
新しい漫画には全く疎いです。
何かおすすめがあったら教えてくださ〜い!


さて、『じんべえ』はビッグコミックオリジナルで読みきり不定期連載された連作集です。
9年前にはフジテレビの月9枠でドラマ化もされています。
このドラマ、主人公のじんべえこと陣平役は田村正和さんだったんですねぇ…う〜ん、ちょっとイメージが違うような。
原作のじんべえってもっとゴツくてバリバリの体育会系ってイメージですもんね。
勤務先が水族館っていうのもちょっと田村さんには合わないような。
ちなみにヒロインでじんべえの娘・美久役は松たか子さん。
まぁこっちは悪くないかな。


じんべえにとって美久は亡き妻の連れ子。
つまり、血の繋がりはない。
美久に対し、年頃の娘を持つ心配性な親父としての顔も見せつつも、な〜んとなくそれだけではないような…微妙な感情も見せるじんべえ。
美久の方も同じように、じんべえに対し微妙な感情を抱いています。
確かに、オヤジとは言えじんべえはまだギリギリ30代だし、学生時代はサッカーのゴールキーパーとして鍛えただけあってなかなかかっこいい。
そんな人と一緒に住んでいれば、戸籍上の父親といえども、微妙な関係になってしまうのも無理はないかも。
その「微妙な関係」の微妙さ加減がまた絶妙で、あだち充さんらしい爽やかなプラトニック・ラブストーリーになっているところが好きです。
美久もあだち漫画の定番ヒロインというべき美少女優等生キャラではありますが、幼くして実の両親の離婚と母の死を経験してきた幸福とは言い難い生い立ちでありながら、しっかりと自立してどこか飄々とした側面もある、嫌味のないキャラクターで好感が持てます。
熱血キャラのじんべえとは対照的でいいコンビです。
熱に浮かされたじんべえが「俺よりも美久のことを愛してくれる男が現れるまで美久の面倒は俺が見る」と叫ぶシーンが好きだなぁ。
美久に対して複雑な感情を抱きつつも、あくまでも美久の父親として美久を大切に思うじんべえの気持ちが伝わってきます。
ラストもいい感じで終わっています。
あだちさんはラストの締め方がうまいと思うけれど、この作品も例に漏れず。
じんべえが働く水族館の水槽前で向き合うじんべえと美久の姿に、2人がいつまでも幸せでありますようにと祈らずにはいられないような、そんな優しいラストでした。
☆4つ。