tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『砂の城の殺人』谷原秋桜子

砂の城の殺人 創元推理文庫

砂の城の殺人 創元推理文庫


行方不明の父親を捜すため、倉西美波はアルバイトに励んでいる。冬休み目前、今度は廃墟専門カメラマンの撮影助手を務めることになった。しかし、向かった先でミイラ化した死体を発見! しかもそれが、長年行方が知れなかった雇い主の母親だというから……。この発見を契機に、崩れ落ちそうなその廃墟で、次々と人が死んでいく。著者渾身のシリーズ第三弾。

<激アルバイター美波>シリーズ第3弾です。
待ってました!!
相変わらず表紙のイラストが可愛くて好きだなぁ。


もともとはライトノベルレーベルとして誕生した本シリーズですが、本格テイストは最初の作品から満載でした。
版元を移してシリーズ再開した今作も、密室殺人、死体の瞬間移動と派手な仕掛けが畳み掛けるように起こって、本格好きの心を十二分にくすぐってくれます。
「本格ミステリを書くぞ!」という作者の意気込みが伝わってきました。
もちろんトリックもなかなかよく考えられていると思います。
また、廃墟と化した館で起こる連続不可能殺人は、その舞台の不気味さもあいまって雰囲気ばっちり。
ホラーが苦手な人はちょっと注意した方がいいかも?
ですが、主人公・美波のちょっと抜けた可愛らしさや、親友・直海の底抜けの明るさと頼もしさで、最初から最後まで楽しく読ませてくれます。
探偵役である藤代修矢がなかなか登場しない上、今回は謎解きにおいてもあまりこれといった活躍を見せない(でも最後に残った真相を見抜くのは修矢なのですが)ので少し物足りない気もしますが、その分今回は直海やもう1人の美波の親友・かのこの名(迷?)推理がなかなか面白いです。


そして、ラストには美波の行方不明の父に関して大きな進展があり、シリーズものとして今後も大いに期待を抱かせる終わり方をしているのが何よりもうれしいところです。
次回作(当然出るんですよね?)はいよいよ美波が父を探しに日本を飛び出すのでしょうか。
異国の地で、美波は今度はどんな事件に遭遇するのでしょうか。
…っていきなりインディ・ジョーンズばりの冒険小説になってたりしたら笑うけど(笑)
ま、それはそれで面白いかも??
でもやっぱりまた本格テイストたっぷりの美波の冒険を見せて欲しいものです。
☆4つ。