tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『狂骨の夢』京極夏彦

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)


夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?著者会心のシリーズ第三弾。

今年最初の読了報告です♪
去年の初読了も京極さんの『魍魎の匣』だったんですよね。
毎年恒例にしちゃおうかな、とも思うのですが、ちょっと新年早々ヘビー(いろんな意味で)過ぎるような気も(^_^;)


京極堂シリーズ3作目にしてキャラクターの造形・役割がしっかりと固定され、ずいぶん読みやすくなったように思いました。
京極堂好きな私としては、なかなか彼が登場しないことにイライラもしましたが(笑)
京極堂の妹(敦子)も好きですね。
姑獲鳥の夏」が昨年映画化されたとき、敦子役を演じたのは田中麗奈さんでした。
ネット上では「イメージと違う」という意見が多かったようですが、私は今回の『狂骨の夢』を読んでいる時、ずっと敦子の登場シーンでは田中麗奈さんを思い浮かべながら読んでいました。
彼女、私はイメージ通りだと思うんですけど実際映画ではどうだったんでしょう?(実は観ていない(^_^;))
あと、榎木津のセリフはいちいち全部が笑えました。
下手をすると重苦しくて陰気くさくなりそうな京極堂シリーズのよいアクセントになっていると思いますね、彼の存在は。
私は「キャラ萌え」とかあんまりよく分かりませんが、確かに京極堂シリーズが多くの人を惹きつけている要因の一つは登場人物だと思います。


さて、ストーリーの方はというと、やっぱり複雑で長い。
300ページ読んでも全体の3分の1にも満たない本って…。
でも意外とすいすい読めるのですよね。
文字の大きさや改行レイアウトなどに作者自身の配慮が行き届いていて読みやすいからですね、きっと。
でもやっぱりこの本の分厚さは疲れます。
文庫本なのに持ち運びしにくいというのは本末転倒だとも思います。
だから次巻以降は刊行中の分冊版で読むかも。
この先もっと分厚くなるんですよね?
私はこの分厚さが限界です。
本の分厚さに比例して(?)、話の内容もどんどん濃くなっているような気がします。
ちょっと複雑で混乱しそうなところもありましたが、たぶんそれは私の知識不足のせいでしょう。
宗教・精神分析・神話・歴史・天皇家・戦争・偏見と差別…などなど、これほど多くの要素をつめこんで、それが破綻することなく上手く結びついてラストまでまとまりのある話になっているのはお見事。
読んでいるだけでとてもいい勉強になりました。
ミステリとしては、今回はけっこう分かりやすい謎解きだったと思います。
途中で大体の真相が読めてしまいました。
それでもこの独特な発想と展開はやっぱり賞賛に値すると思います。
ラストは少し切なく、というか悲しい気分にさせられます。
読み応えたっぷりですが、途中に出て来る宗教の話など、なかなかハードな内容も含んでいますので、気力体力に余裕があるときに読むことをお勧めします(笑)
☆4つ。