tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『H2 11巻 サンデーコミックスワイド版』あだち充

H2 (11) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

H2 (11) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

熱い投手戦を制して2回戦へ進出した千川。
明和一高も余裕で1回戦突破。
これで2回戦を勝てば3回戦で比呂vs英雄の対決が実現する可能性がさらに高まった。
2回戦は千川・明和一ともに8月16日にプレイボール。
この日はひかりの誕生日。
これまでずっと、比呂はひかりの誕生日の試合には負けたことがなかった。
比呂は、英雄は、大切なひかりに最高のバースデイプレゼントを贈れるのか…?


もう〜、この巻はとにかく泣けたとしかいいようがないです。
切なさが最高潮に達したという感じでしょうか。
早速もうこの巻の名台詞に行ってしまいましょう。
2回戦が終わった後、比呂がひかりに初めてはっきりと秘めてきた想いを告白するシーンです。

おれの初恋は、中二の終わりだったんだよ。
(中略)
もう一度、中一に戻れたとしても、おれはまた喜んで英雄におまえを紹介するし、そして、また1年半後に気がつくんだよ。
ひかりってけっこういい女じゃないかって、―な。
勝負を逃げたわけでも、ムリしたわけでもねえ。
おれの思春期が1年半ずれてた。
それだけさ。
―けど、それでも時々思ったりするわけだ。
あいつさえいなかったら、―なんてな。
大好きな親友のことを、一瞬でもそんなふうに思ってしまう自分が嫌で嫌で……
確認したかったんだよ。
甲子園で、
大好きな野球で、
戦うことで、
あいつの存在を―

いつも明るく脳天気で野球バカに見える比呂ですが、実はずっと一人で苦しんできたのでしょうね。
「思春期がずれてた」と言っても、「それだけ」だとそう簡単には割り切れるものではないですよね。
自分が恋に目覚めた時には、すでに相手は別の男と恋愛真っ最中だったわけですから。
そして、その「別の男」とは、自分の親友であり、自分が紹介した男だったのですから。
伝えるわけにもいかない気持ちを抱えて、それでもひかりの幼なじみとして、英雄の親友として変わらず2人と仲良く付き合ってきた比呂の気持ちを思うと、たまらなく切なくなります。
またこのセリフの後の比呂の表情が本当に辛そうで、読んでるこっちが辛くなってきてしまいました。
でもこれ、告白されたひかりの方も辛いでしょうね〜。
比呂の魅力は今となってはひかりも十分承知していますし、幼い頃からずっと一緒に過ごしてきて一番気心が知れている相手ですが、それでも比呂の気持ちに応えることはできないのですから。
春華も比呂がひかりを好きなことを察してしまい、ショックを受けています。
比呂とだいぶいい感じになってきて、楽しい時を過ごしてきただけに、傷つくのは当然だと思います。
比呂が「甲子園に来れたのはすべて春華のおかげだ」と思っていることが救いですが、あまりにもかわいそうでした。
そんな中、ますます男としての株を上げているのが英雄。
甲子園の活躍でますます怪物ぶりを発揮し、元気のない春華に笑顔を取り戻そうとさりげない気遣いを見せる英雄は本当にいい男だと思います。
英雄がそういう男だからこそ、比呂も苦しまなければならなかったのですが…。
でも比呂、早く気持ちを切り替えないと、ぼやぼやしてると春華まで失う羽目になるよ。
ほらほら、言ってる間に木根とのデートを承諾しちゃった。
さて、比呂はそれを知ってどう出るのでしょうか…?