tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『四日間の奇蹟』浅倉卓弥

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)


台風のため早く退社できて思わぬ自由時間が増えたので、一気に読んだ作品がこれです。

第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作として、「描写力抜群、正統派の魅力」「新人離れしたうまさが光る!」「張り巡らされた伏線がラストで感動へと結実する」「ここ十年の新人賞ベスト1」と絶賛された感涙のベストセラーを待望の文庫化。
脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇する不思議な出来事を、最高の筆致で描く癒しと再生のファンタジー。


「泣ける」という惹き句に弱いもので(笑)思わず書店で手に取ってしまいました。
しかし結論から言うと、泣けませんでした。
というのも、物語の中心となるネタが某人気作家の某人気作品(私も大好きな作品です)とほとんど同じなんですよね…。
もちろん結末やテーマは異なるのですが、それでもやはり「どこかで読んだ話」という印象はぬぐえず、結果としてあまりのめりこめませんでした。
ただ、「このミス大賞」の選評で絶賛されているように、人物や風景や音楽の描写は非常にうまいと思いました。
最初のうちは何か事件が起こるわけでもなく、延々と主人公たちの状況説明がなされるだけなのですが、それが全く退屈でないどころか、どんどん読み進められるのです。
けっこうページ数も多いのですが、それを全く感じさせられませんでした。
登場人物もみな基本的に善良で、魅力的な人たちばかり。
それだけに、パクリではもちろんないのでしょうが、有名作品とネタがかぶってしまったのが残念でなりません。
「張り巡らされた伏線」といいますが、某作品を読んでネタは分かっているのでどうしてもある程度結末が予想できてしまい、せっかくの伏線が伏線にならないのです。
ただ最後に起こる「奇蹟」は確かに感動的ですし、ハッピーエンドとはいいがたいラストも暗くならずむしろさわやかで、読後感が非常によかったです。
某作品を読んでいなければ、間違いなく感動の名作として心に残る作品となっていただろうと思います。

四日間の奇蹟浅倉卓弥
2004年1月発売 宝島社文庫 \725(税込)