tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜』三上延


鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。変わらないことも一つある―それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せられるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき―。

人気シリーズ第二弾。
栞子さんが退院して店に戻り、一度はビブリア古書堂を辞めた大輔も栞子さんと仲直りして、再び店で働き始めました。
2人で切り盛りする古書店には、相変わらずさまざまな客が古書とともに謎を持ち込みます。
古書にはその持ち主の歴史や秘密が詰まっている―。
1作目に続き、栞子さんの鋭い洞察力による推理が見事な作品です。


やはり個人的には連作短編集という形式が好きですね。
この手のミステリには一番合う形式だと思います。
一編一編は独立した謎を扱っていても、1冊を通して読めば、全体を貫く大きな謎もあるというのにワクワクさせられます。
少しずつ、巧妙に張られた伏線に感嘆するのが醍醐味ですね。
今回は栞子さんの家に置かれている一つの絵画と、栞子さんのお母さんについての謎が、作品全体を貫く謎となっています。
その謎を解いていくことが、大輔にとっては栞子さんのことをもっと深く知り、彼女との距離を縮めていくことになるという構成がうまいですね。
もっとラブコメっぽい展開になるのかと思いきやそれほどでもなく、あくまでも謎解きメインの日常ミステリでありながら、その謎解きにうまく恋愛要素を絡めているのが憎いなぁと思いました。
そうやって大輔とともに読者も少しずつ栞子さんのことを知っていくことになるのですが、徐々に明らかになっていく栞子さんの生い立ちや人柄が魅力的で惹かれます。
これからの続編によってまた新たな栞子さんの一面が知れるのが楽しみです。


また、今回は本好きならば、いや本好きでなくても必ず知っているような著名な作品や作家の裏話的な薀蓄が謎解きに絡んでいる点が楽しかったです。
この作品にそんな事情が!?と驚いたり、あの作家にそんな経歴が…と感心したり。
マニアックと言えばマニアックですが、根っからの本好きでなくても楽しめる類の薀蓄ではないかと思います。
そういう意味では、前作よりも一般的で誰にでもとっつきやすい謎解きになっているのではないでしょうか。
古書好きで知識もかなりあるというような人には物足りないかもしれませんが、私としては前作よりも話についていきやすく感じました。
前作では栞子さんの推理力がすごすぎて突拍子がないように思われる部分もありましたが、今回は大輔から聞いた話だけではなく、栞子さんが自ら動いていることが多いせいか、謎解きに無理がないようにも思えました。
展開の盛り上がりとしては、映像的な見せ場があった前作の方が上かもしれませんが、個人的には地味ながらも栞子さんの個人的な事情に深く入り込んだ今作の方が感情移入しやすかったです。


ということでこのシリーズには今後も期待大です。
まだ栞子さんについて謎の残っている部分もありますし、大輔との関係がどのように変化していくのかも気になるところ。
3作目は今年春発売とかいう噂を耳にしましたが、どうなんでしょう…?
楽しみに待っています。
☆5つ。