tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『3月のライオン (4)』羽海野チカ

3月のライオン 4 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 4 (ジェッツコミックス)


獅子王戦の挑戦者となり、宗谷名人に挑む島田八段。体調不良の島田を気遣い、桐山は一路京都へ向かう。河の流れのように進む優しいラブストーリー。

いよいよ本格的に将棋マンガらしくなってきました。
表紙も3巻までとは違う感じ。
まさか島田八段とは…。


中身を読めば、表紙が島田八段である理由もよく分かります。
この巻の主人公は島田八段と言っても過言ではないのです。
痛む胃を抱えながら、全力を振り絞って宗谷名人に立ち向かう島田八段の姿と、その裏に流れる将棋への熱い想いに圧倒されました。
それは傍らで島田八段の戦いぶりを見守った零も同じで、「戦う理由」を見つけ出すためのヒントをようやくつかんだようです。
二海堂には先を越されてしまったけれど、この巻最後の零くんは「戦う男」の顔になっていました。
今まで才能を持ちながらも迷いながらの将棋しかできなかった零くんが、戦う男たちの苦悩と熱い魂に触れて、これからどのように棋士として成長していくのか楽しみです。


個人的には宗谷がこれからどのように描かれるのかも気になっています。
神とか悪魔とか呼ばれ、完全無欠で敵なしのように見える宗谷ですが、彼も人間である限り、何らかの苦悩や迷いを背負っているはずだと思います。
「ハチクロ」の森田さんがそうであったように、才能ある「選ばれた者」には「選ばれなかった者」とはまた別の苦しみがあるということを、羽海野さんなら描かずにはいられないでしょう。
羽海野さんは凡人と非凡人、両方の立場に目を向けて思いやれる人だと思うからです。


熱く、静謐な男の戦いが描かれた4巻ですが、ラブストーリーとしての物語の行方も気になるところです。
零と香子さんとの複雑な義姉弟関係が、読者としても見ていて苦しい。
香子さんが根っからの悪女で嫌な女だったら、読者としては無責任にひなちゃんに共感していればいいのでしょうが、香子さんは嫌いになれないというか…零くんの気持ちも分かるんだよね。
これからどうなっていくんだろう。


それともう一つ…零くんと担任の林田先生との場面が泣けて泣けて仕方なかったです。
私疲れてるのかしら(笑)
頑張ってれば、ちゃんと見てくれている人がいるんだよね…気付いていなくても、きっとどこかに。


冷たさと厳しさ、暖かさと優しさが、相変わらず絶妙のバランスで混在している作品です。
早くも次巻が楽しみです。