tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『垂里冴子のお見合いと推理』山口雅也

垂里冴子のお見合いと推理 (講談社文庫)

垂里冴子のお見合いと推理 (講談社文庫)


縁談は事件を連れてやってくる――!


垂里家の長女・冴子、当年とって33歳、未婚。
美しく聡明、なおかつ控えめな彼女に縁談が持ち込まれるたびに、起る事件。
冴子は、事件を解決するが、縁談は、流れてしまう……。
見合いはすれども、嫁には行かぬ、数奇な冴子の運命と奇妙な事件たちを名人上手の筆で描き出す、特上の連作ミステリーついに文庫化。

本人に悪いところはないのに、なぜか縁遠い人っていますね。
もてそうなのに彼氏彼女がいないって人もけっこういますし。
この作品の主人公・冴子さんもそんな人。
美人で頭も良くて博識で穏やか。
いつも和装だったり本の虫だったりして、ちょっと変わり者なところもあるけれど、別に全然問題のある変わり者ではない。
むしろ、「ぜひ息子の嫁に!」と熱望する人も多そう。
なのに何度お見合いを重ねてもうまくいかないのは…やはり垂里家の娘にかけられた呪いのせい!?
なぜか冴子が見合いをすると、そこには事件がついてくる。
そして、状況や事情を冷静に見極めて、すばらしい推理力を見せ、鮮やかに事件を解決してしまいます。
けれども冴子のすごいところは、推理力以上に、何が起こっても動じない落ち着きぶりではないかと思います。
結婚のことだって、騒いでいるのは親や妹弟、それにおせっかいな伯母さんばかり。
当の本人は全く焦る様子も見せず、いつも悠々と構えています。
世間では30過ぎて独身、子なしの女は負け犬などと呼ばれますが、縁遠いことを恥じるでもなく自嘲するでもなく、全く動じずいつも自分のペースを保っている冴子さんはなかなかかっこいいのではないでしょうか。
自分は自分、世間は世間。
でもやっぱり、いつかはいい人と巡り会って、幸せになって欲しいな。
だってどうも冴子さんの見合い相手、ちょっと何だかなって感じの人ばっかりなんだもん。
信じるものは救われる…!?