tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『覆面作家は二人いる』北村薫

覆面作家は二人いる (角川文庫)

覆面作家は二人いる (角川文庫)


姓は「覆面」、名は「作家」―本名・新妻千秋。
天国的な美貌を持つ弱冠19歳の新人がミステリ界にデビューした。
しかも、その正体は大富豪の御令嬢…ところが千秋さんには誰もが驚く、もう一つの顔があったのだ。

いや〜、タイトルやこれまで読んだ同じ著者の作品から想像していた内容とはかけ離れていました。
北村さんお得意の謎解きものではあるけれど、コメディー調なのが面白いです。
探偵役の作家のキャラクターには脱帽。
最初「お嬢様」と来たから、加納朋子さんの『螺旋階段のアリス』の探偵役・安梨沙みたいな感じなのかと思ったら、全然違いました。
いい意味で裏切られました。
ワトソン役(?)の編集者とその双子の兄である刑事もいい味出してますし。
特に会話がテンポよくてユーモアが効いていて、小気味よいのです。
というか正直言ってこれらの登場人物たちのキャラクターや言動ばかり気になって、謎解きは二の次でした。
まあ、読み方としてはそれで間違ってないかな、と。
とにかく強烈な個性を持った人物たちですから。


連作短編集の形になっていますが、特に印象に残ったのは子どもの誘拐の話。
なんとなくだけど、「真犯人」の気持ちが分かるような気がしたからです。
1話が短くてとても読みやすい作品。
続編もあるみたいですね。
買いに行こうっと。