ラスト1ページですべてがひっくり返る。
話題の超絶ミステリがついに文庫化!
各章の最後のページに挟まれた「写真」には、物語ががらりと変貌するトリックが仕掛けられていて……。
2度読み確実!あまりの面白さが大反響をもたらした、道尾秀介渾身の超絶ミステリ。
短編の物語を読んだ後、最後のページに掲載されている写真をよく見れば物語に残った謎が解けるという、最後の推理を読者に委ねるタイプの謎解きミステリです。
クイズ好きや「読者への挑戦状」好きにはたまらない趣向ですね。
私もこういう謎解きが大好きなので、全3話+αをワクワクしながら読みました。
3つの話の舞台は共通していて、蝦蟇倉 (がまくら) 市と白沢 (はくたく) 市という隣接する2つの地方都市で起こる3つの事件が描かれます。
この蝦蟇倉市は東京創元社から刊行された、人気ミステリ作家が競演するアンソロジーのために創造された舞台で、私はこのアンソロジーを過去に読んでいました。
本作の第一章「弓投げの崖を見てはいけない」がアンソロジーに収録されていた作品なのですが、アンソロジー収録時のものと大筋や結末は変わらないものの、改稿された部分が多く、謎解きの趣向も変更されています。
アンソロジー収録時には文章のみで結末を推理するようになっていたのですが、それが写真を見て推理する方式に変更され、謎解きとしてよりわかりやすく、推理しやすくなっていました。
推理しやすくなったことで、物語の読後感を味わいやすくなったのではないでしょうか。
真相に気づいたときのぞっとするような印象が後を引きます。
やはり本作は「本当の」結末を理解してこその物語です。
第二章「その話を聞かせてはいけない」は第一章が刑事視点の物語だったのが一転して、小学生の男の子の視点になりがらりと雰囲気が変わっています。
男の子が文具店である事件を目撃し、その後絶体絶命の危機に陥るのですが、そこに現れたのは――。
個人的にはこの章が謎解きは一番簡単に感じました。
文章だけでもある程度の推理が可能だったので、最後の写真はその答え合わせという位置づけになりました。
第一章と同様に、写真の意味が分かるとちょっとぞっとする結末ではあるのですが、この第二章はある意味でホッとする結末でもあり、なんとも複雑な気分が味わえます。
第三章「絵の謎に気づいてはいけない」では、第一章に登場した人物たちが再び登場します。
第一章は後の展開が気になる終わり方だったので、後日談が読めてうれしくなりましたが、これまた結末にぞっとしました。
最後のページの写真が示す「真相」も衝撃的です。
謎解きとしてはそれほど難しくはなく、作中に登場する絵と写真をよく見比べて、文章の最後に書かれていることとを考え合わせればすぐに意味が理解できますが、明らかになった真相には嫌な気持ちが湧き上がってきます。
こうして3つのぞっとする結末を読んだ後の短い終章「街の平和を信じてはいけない」がなんともまた印象的です。
非常に穏やかで、さわやかなラストシーンが描かれますが、3つの結末の意味をすべて理解した読者には、このラストシーンは見た目どおりのものではないということがわかります。
皮肉が効いた結末に、心がざらつくような嫌な感覚が残りました。
読後感は決して良くはありませんが、謎解きとしては難易度もほどほどで十分楽しめます。
続編の『いけないII』も刊行されるとのことなので、まずは本作で腕試しができてよかったです。
☆4つ。
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