tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『3月のライオン 6』羽海野チカ

3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)


学校で友達をかばったために、いじめに合うひな。周りに負けず戦う彼女のために零はできることを必死に捜す。零は元担任の林田先生に「お前にできることを一つずつやりなさい。」と諭され、ひなのために戦うことを誓う。すべての読者の心を感動で震わす「3月のライオン」。戦いの第6巻ここに登場です。

零くんが着実に成長していっているのがよく分かってうれしい6巻。
もう冒頭からやられました。
まさか開始5ページですでに泣かされるとは…。
その後も適度にギャグを交えて笑わされながらも、何度も何度も泣けて泣けて仕方なかった。
ツイッターなんかで「電車で読んでいる人がたくさんいた」というツイートを見かけましたが、私は電車で読むのは無理だなぁ。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになるもん。


5巻から続くひなちゃんのいじめ問題。
いじめられていた友人をかばったところ、今度は自分がいじめの標的にされて…という、わりとよくあるのではないかと思われる構図。
たまに「いじめられる側にも問題がある」という意見を耳にすることがあるけれど、本当にそうだろうか。
少なくともひなちゃんは何も悪いことはしていない。
むしろひなちゃんの言動の方が、いじめっ子たちよりも絶対に正しいのです。
それでも、正しい者がいつでも認められるとは限らないのがこの世の中の理不尽なところで…。
「まずは正しいことをしたひなを褒めてやる」というひなのおじいちゃんも、「正義なんてどーでもいいから逃げてほしかった」というあかりさんも、どっちの気持ちも分かるからこそ、感情移入してしまって、泣いているキャラクターと共に泣き、怒っているキャラクターと共に怒るのです。
羽海野さんの、漫画家として優れているところの一つは、読者にキャラクターに共感させる力が強いストーリーと表現力を持っているところなのだと思います。


そして、そんな難しい問題を受けて、自分も学校で孤立していた(今も…)零くんは、彼女のために自分にできることを探し始めます。
「誰かに必要とされたい」→「強くなりたい」→「勝ちたい」、と意識がだんだん変わっていって、欲が強くなって、今までの零くんにはなかった「闘志」とかそういったものが生まれてきます。
いや、もともと零くんは負けず嫌いだし、自尊心も強い方なので、もともと「戦う者」にふさわしい土壌は持っていたんですよね。
そこに、暴走しがちな零くんに親身になってうまく導いてくれる元担任の林田先生や、身を削っても故郷のために戦い続ける島田八段や、難病を抱えながら倒れるまで戦う二海堂や…、そうしたたくさんの人たちの影響で、零くんは徐々に棋士としていい方向に向いていっているのではないかなと思います。


「戦いの6巻」、熱かった。
ラストのあの零くんの行動は、なんとなくハチクロの野宮さんとか、あだち充さんの『タッチ』のあの名シーンを連想しました(読んだ人なら分かっていただけるかと…)。
また首を長くして続きを待つ日々に戻ります。
次巻は今回出てこなかった香子さんも少しは出番があるといいなぁ…。