tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『緋色の囁き』綾辻行人

緋色の囁き (講談社文庫)


綾辻さんは好きだけど、ホラーは苦手なので今まで「囁きシリーズ」には手を出していませんでした。
でも、ブック○フで100円だったのでついつい手に取ってしまいました(最近このパターンでの買い物多いなぁ…)。

魔女、魔女、魔女。名門女学校の恐怖。
「私は魔女なの」謎の言葉を残したまま1人の女生徒が寮の「開かずの間」で焼死した。
その夜から次々と起こる級友たちの惨殺事件に名門女学園は恐怖と狂乱に包まれる。
創立者の血をひく転校生冴子は心の奥底から湧き起こってくる“囁き”に自分が殺人鬼ではないかと恐怖におののく。
「囁き」シリーズ登場!!


読んでみるとやっぱりホラー。
緋い(あかい)です。
真っ赤です。
血まみれです。
におってきそうです(ひ〜)。
こういうの苦手だけど最後まで読めたのはやっぱり綾辻さんの筆力ゆえなのか。
ホラーですが基本はミステリですから。
誰が犯人で、事件の裏側には何があるのかを考えながら読んでいました。
犯人はけっこう意外に思ったのですが、読み終えてからよく考えてみたら、途中に出てきた伏線となるエピソードを考えてみれば、確かにこの人しかいないよなぁと。
分かる人はきっと途中で分かるのでしょう。


でもやっぱりこの作品の場合はミステリとしてよりホラーとしてよくできていると言うべきでしょうね。
綾辻作品に共通するのは雰囲気作りのうまさではないかと思います。
綾辻さんの代表作「館シリーズ」も、いかにも連続殺人事件が起こりそうな雰囲気(おどろおどろしい不気味な洋館、一癖も二癖もある住人たち、館に点在するミステリー…)が非常にリアルに描かれていて、登場人物たちと同じ恐怖感を読者も味わうことができるのです。
この作品の場合は、全寮制の前時代的な名門女子校の雰囲気がすごい。
建物の描写ひとつとっても、陰惨な事件の舞台にふさわしい空気が流れているのがよく分かります。
そこで厳しい規則に縛られた学校生活を送る少女たち。
彼女らが密かに行う異常な「儀式」…。
舞台設定はバッチリ!
完璧なまでに作りこまれた世界に浸らせてくれます。
映像化したら人気が出そうな作品ですね。
ホラーが好きな人、スプラッタが好きな人に特にお薦めです。


ところでこの作品に出てくる女生徒たちのお嬢様口調を読んでいて、無性に『笑う大天使(ミカエル)』*1が読みたくなってしまいました(笑)
こちらはホラーとは程遠いのほほんギャグ漫画ですけどね。
明日あたり再読してみよう。

*1:川原泉の人気漫画。ISBN:4592883144