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tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『屋上のテロリスト』知念実希人

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)


一九四五年八月十五日、ポツダム宣言を受諾しなかった日本はその後、東西に分断された。そして七十数年後の今。「バイトする気ない?」学校の屋上で出会った不思議な少女・沙希の誘いに応え契約を結んだ彰人は、少女の仕組んだ壮大なテロ計画に巻き込まれていく!鮮やかな展開、待ち受ける衝撃と感動のラスト。世界をひっくり返す、超傑作エンターテインメント!

あらすじを読んで設定に惹かれたので手に取ってみました。
文庫派の私には、文庫書き下ろしは文庫化を待たずに著者の最新作が読めるという点でたいへんありがたいです。


本作はいわゆるパラレルワールドものですね。
二度の原爆投下の後、ポツダム宣言を受諾しなかった日本が舞台となっています。
1945年8月15日以降も太平洋戦争が続行した結果、3つ目の原爆が新潟に投下され、九州は連合軍に、北海道はソ連に侵攻されて、日本は東日本連邦皇国と西日本共和国の二つに分断されました。
それから70年以上経った西日本共和国のとある高校で、自殺願望を持った少年・彰人は、謎の美少女・沙希に出会います。
彰人は沙希の頼みを引き受け、彼女のボディーガードとしてテロ計画に関わっていくことになります。
ポツダム宣言を受諾しなければ連合国ソ連によって日本は二つに分断されていた……というのはなかなか説得力があって、突飛でない分すんなりと設定を受け入れてストーリーに没入できました。
西の大統領、東の書記長など、両国のトップや軍も登場し、緊迫した事態がスピーディーに描写されていき、サクサクと軽快に読めるエンタテインメントです。
内容も重すぎず軽すぎずでちょうどいい感じでした。


が、読んでいる途中はわりと楽しく、面白かったのですが、読み終えてみるとなんだか物足りなさも感じました。
設定はあらすじを読んで惹かれたとおりとても良いと思ったのですが、どうもその設定を最大限には活かしきれていない気がします。
もっといろいろストーリーに広がりを持たせることもできる設定だと思うのですが、ちょっと小さくまとまりすぎてしまったでしょうか。
物語の主眼はテロ計画ではなくボーイ・ミーツ・ガールなのかもしれませんが、それでも惜しいなぁという感想にどうしてもなってしまいます。
また、帯の「あなたは100回騙される!」という惹句にも違和感があります。
個人的には、沙希と彰人が東で会う老人の正体も、西側の首脳陣の中に潜む沙希の協力者が誰かも、大体見当がついてしまったので大きな驚きはなく終わりました。
それでもストーリー的には面白いのだから、出版社のアピールポイントがずれているのか、私がミステリ慣れしすぎて多少のことには騙されなくなってしまっているのか、どちらかわかりませんが、少なくとも私ならこんな惹句はつけません。
そういう意味でも惜しい作品だなという印象になってしまいました。


設定は本当に私の好きなタイプのもので、文章も非常に読みやすく描写も分かりやすいので、もう少しどっぷりとこの世界観に浸らせてほしかったというのが正直な感想です。
結末からすると続編がありそうにも思えるので、ぜひ次はさらにスケールを広げた物語を書いてみてほしいと思います。
☆3つ。