tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『俺物語!! (13)』アルコ×河原和音

俺物語!! 13 (マーガレットコミックス)

俺物語!! 13 (マーガレットコミックス)


大和のお父さんがスペインへ転勤することが決まった。最初は家族についてスペインに行くと言っていた大和だけど、猛男への想いが募るあまり、家出をしてしまう…。連れ戻すため、家出に一緒についていった猛男だが!? みんなの想いがぶつかりあう堂々の最終巻!!

『俺物語』もついに完結。
人気が出るとダラダラと引き延ばされて終わりが見えなくなっていく作品もマンガでは時々見かけますが、本作はそのようなことにならず、程よいタイミングで終わってよかったと思います。
ちなみにこの13巻の渋い表紙絵はゴマで描かれた絵を写真撮影したものだそうです。
面白い趣向とは思いますが、こういう小さな細かいものがいっぱい集まっているものを生理的に受け付けない人もけっこういるのに (私は全く平気ですが)、最終巻でやるとはチャレンジャーだなぁ……。


12巻でいきなりの急展開に突入し、父親の転勤に伴いスペインに行くことになった大和。
猛男と離れ離れになるのがさみしくて家出し、追いかけてきた猛男と一緒に沖縄へ逃避行します。
基本的に物わかりがよくて「いい子」なのが大和なので、このような多少強引な展開でもなければ、少女マンガの定番エピソード「彼氏と初めてのお泊り」が描けなかったんだろうな。
大和のさみしい気持ちをしっかり受け止めた猛男が頼もしく見えました。


その後大和はスペインに旅立ち、猛男とは遠距離恋愛になります。
さすがに元気のない猛男を励まそうと、受験勉強をするように発破をかけたり、旅行に誘ったりする砂川君の健気な親友ぶりが素敵でした。
というか砂川君、最後までなんだか不憫というか……。
何巻だったかで原作の河原和音さんが、砂川も恋をする、相手ももう決まっていると書かれていたのに、そのエピソードが結局描かれないまま終わってしまったのが残念です。
好きなキャラなので幸せになってほしかったなぁ。
でも、最後まで読むと、この『俺物語!!』という作品は、猛男と大和の恋と、猛男と砂川の友情がメインの物語だからこれでよかったのかなとも思えました。
ラストは最終回にふさわしく、今までの登場人物が再集結という感じで楽しかったです。
やっぱりこの作品は主人公だけでなく脇役も個性が際立っているところがよかったなと再確認できました。
欲を言うなら、砂川の姉さんや猛男の妹・真希ちゃんあたりのエピソードをもう少し読みたかったです。


ちょっと最後は展開が駆け足になって、あまり余韻を楽しむという感じではなくなってしまったのが残念。
でも、この作品らしいハッピーエンドでよかったです。
どの巻を読んでも幸せな気持ちになれて、そういうラブコメは意外とありそうで少ないので、とてもよかったと思います。
アルコさん、河原さん、お疲れさまでした!