tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『別冊図書館戦争I』有川浩

別冊図書館戦争 1―図書館戦争シリーズ(5) (角川文庫 あ)

別冊図書館戦争 1―図書館戦争シリーズ(5) (角川文庫 あ)


晴れて彼氏彼女の関係となった堂上と郁。しかし、その不器用さと経験値の低さが邪魔をして、キスから先になかなか進めない。あぁ、純粋培養純情乙女・茨城県産26歳、図書隊員笠原郁の迷える恋はどこへ行く―!?恋する男女のもどかしい距離感、そして、次々と勃発する、複雑な事情を秘めた事件の数々。「図書館革命」後の図書隊の日常を、爽やかに、あまーく描く、恋愛成分全開のシリーズ番外編第1弾。本日も、ベタ甘警報発令中。

ぎゃーーーーー!!!
甘い甘い甘い!!
思わずのっけから叫んでしまうほどベタ甘な「図書館戦争」シリーズ番外編第1弾。
本編で書ききれなかった恋愛部分を思いっきり書いたらこうなった、とそれはよく分かりますが、それにしてもここまで甘くできるかってくらい甘いです。
イチャイチャしてても(これは当たり前か)、ひとりで悶々としてても、けんかしてても、とにかく何してても甘い。
お砂糖増量中なので、胸焼け注意な1冊です。


本編ラストの『図書館革命』では、郁と堂上がようやく…と思ったところでエピローグでいきなり時間が飛んで、一番おいしい部分を飛ばされちゃったなという感じでした。
そこにがっかりした人なら、この「別冊」を読めば溜飲は下がるはず。
付き合い始めのまだぎこちない2人から、少しずつ恋人らしい関係へと進んでいく様子が甘いせりふ&シチュエーション満載で描かれます。
本の帯には「もどかしいにも程がある」と書かれていましたが、物語の進行自体はとてもテンポがよいので、私はそれほどもどかしさは感じませんでした。
確かに2人の関係の進み方はとてもゆっくりなんですけどね。
むしろ「もどかしいにも程がある」のは手塚&柴崎の方だろうと思うのですが…。
いつまで微妙な関係のままなんでしょう。
それは次の巻で多少は話が動くことを期待するしかありませんが。
郁と堂上はゆっくりながらもしっかり確実に関係は進みましたからね。
堂上に触れられたいけど関係を進めるのはちょっと怖いとか、デートの時の服装やら下着やらでいろいろ悩む郁がかわいいなと思いました。
それにしても「教官モード」から「彼氏モード」に変わった堂上のイメージの変化にびっくり。
どっちかというと朴念仁タイプかと思ってたのに、甘いせりふもさらっと吐いちゃうなんて…。
男って怖い(?)。


とにかくベタ甘な作品ですが、有川さんのベタ甘ラブコメのいいところは、恋愛がファンタジーのようになっていないところだと思います。
少女マンガなどを読んでいるとたまに感じる、「こんな恋愛、実際にはないでしょ」というようなところがなく、とてもリアリティがあると思います。
甘いせりふもシチュエーションも、読んでいてキュンとするようなものではありますが、妄想の世界ではなくリアルな大人の恋愛を描いているから抵抗感が少ないのです。
仕事と恋愛の境界線だとか、「お泊り」絡みのことだとかまで、大人の恋愛において避けて通れないものを真正面から描いているから、ちょっと気恥ずかしさはあるものの、すんなりと受け入れられるし、共感しやすいのですね。
甘い恋愛話が好きなんだけど、少女マンガではちょっともう物足りないかなという大人の女性(男性も?)にはちょうどいい作品だと思います。


本編ほどではないにしろ、図書館の役割や言論の自由表現規制の問題にも要所要所で触れられていて、いろいろ考えさせられるところもありました。
甘いばかりでもない、欲張りな作品だと思います。
…いや、やっぱり甘かったな〜(笑)
☆4つ。