tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25 @ヤンマースタジアム長居 (8/13)

*後半に演奏曲のネタバレあります (直前に警告あり)。


f:id:tonton110:20170816225047j:plain


ミスチルのデビュー25周年を記念したツアー、前回はツアー初日のナゴヤドーム公演に遠征参加したのですが、今回は地元・大阪のヤンマースタジアム長居公演に参加してきました。
真夏の野外ライブということで、何日も前から暑さ対策を考えてしっかり準備していきましたが、当日は晴天ながら暑すぎず、程よく風が吹いて、座席が開演時には日陰になっている場所だったため、ドーム以上に快適でライブに集中できました。
野外だとやはり空の色が演出の一部となっていいですね。
明るいうちはステージがよく見えましたし、暗くなってからは照明がきれいで、どちらも楽しめてとてもよかったです。


演奏曲については後で触れますが、ミスチルの25年が詰まったライブ、という一言に尽きます。
最初から最後まで、ミスチルを聴いてきた世代なら絶対に知っている曲の連続なので、ついつい一緒に口ずさんでしまいます。
観客が何万人もいると、ひとりひとりは口ずさむレベルの音量でも盛り上がる曲では軽く合唱のようになりがちで、普段のライブなら「桜井さんの歌を聴きたいのに」と思うところが、みんなで一緒に歌っているということがうれしく感じられる場面がたくさんありました。
もちろん桜井さんはいつも通りのパワフルなボーカルで、時に走ったり、時に雄たけびを上げたりと、見ている (聴いている) こちらも元気になれるようなステージを見せてくれました。
JENの計らいで、ドームでは聞けなかった中川さん・田原さんの肉声が聞けたのも、たった一言でもすごくうれしかったです。


演出も抑えるところは抑えつつ、派手なところは思いっきり派手に華やかにと、メリハリがあってよかったです。
個人的には初のアリーナ席だったので、今まで無縁だった「テープが自分の頭上に降ってくる」という体験ができました。
ステージは遠かったですが、なんとかステージ全体を視認できました。
ただ、メンバーが花道に行ってしまうと途端に見えなくなりましたが……。
でも最近のライブは高画質で大きなサイズの映像でしっかり迫力を伝えてくれるので、席が遠くても十分楽しめます。
特に今回のライブはカメラワークが凝っていると思いました。
メンバーの頭上からの映像など、どの席でも見られないような映像もあって、新鮮な視点が面白かったです。
スタジアムのような広い会場だと、ステージやメンバーを肉眼で十分に見られる人はごく一部になってしまいますが、それを逆手にとって映像で楽しませようというスタッフの心意気が感じられました。


10周年の頃はまだちょっとひねくれていて、「どうせ (ファンも) みんないつかは離れていくんだろ?」と思っていたという桜井さん。
歳を重ねて40代後半に差し掛かった今、同世代の人が体調を崩したり、亡くなってしまったりすることもあって、自分たちもいつまでやれるんだろうと思うこともあるという不安も語ってくれました。
25年経っても4人全員そろって元気にライブをやってくれることのありがたさをしみじみと感じます。
ライブは体力の要ることだろうと思いますが、無理せず時々は休みながら、また30周年も35周年も元気なライブを見せてくれたら幸せです。
そのライブを観に行くために、私も健康でいなければと固く心に誓った1日でした。
素晴らしい25周年ツアーをありがとうございました!!


【以下、演奏曲に触れています】














前回のライブレポでは演奏曲には触れなかったので、今回ナゴヤドーム公演の分も含めて感想を残しておきます。
とにかくヒット曲満載でテンション上がりっぱなしのセットリストだったわけですが、個人的には「CROSS ROAD」を初めて生で聴けたのが感激でした。
しかも、「CROSS ROAD」→「innocent world」→「Tomorrow never knows」という流れは、私の世代にはたまりませんね。
この3曲のヒットによりミスチルが一気にブレイクしていくのをリアルタイムで見てきた世代ですから。
そんなわけで感動に打ち震えていたのがナゴヤドーム公演だったのですが、長居公演では「CROSS ROAD」が「君がいた夏」に変わっていてちょっとがっかりしました。
いえ、「君がいた夏」もデビュー曲で大事な1曲なので、この25周年ツアーで聴けたこと自体はうれしかったのですが。
ドームとスタジアムとではけっこうセットリストが変わっていたので、似たようで別物のライブとして楽しめました。
現在ドラマ主題歌として使われている「HANABI」はドームでは演奏されませんでしたが、やはりスタジアムのセットリストには入ってきましたね。
ヒット曲満載と言いつつ、「1999年、夏、沖縄」や「こんな風にひどく蒸し暑い日」「Simple」「ランニングハイ」「ポケットカスタネット」などのシングル外の曲も適度に散りばめられていて、それがまたいいアクセントになっていました。
特にJENボーカルの曲「思春期の夏~君との恋が今も牧場に~」はレアですし、一気に会場の雰囲気を変えてくれました。
サビ前にJENが「歌えるもんなら歌ってみやがれ!」と煽ったのは笑えました。
その後MCもなしに、ドームでは「抱きしめたい」、スタジアムでは「365日」と真面目なラブソングでまた一気に元の流れに戻したのも面白かったです。
大ラスが「終わりなき旅」というのも熱いですね。
この曲だけはいつ聴いてもいろんな想いが湧いてきて、胸がいっぱいになります。


これだけ豪華なセットリストでありながら、終わってみればあれもやらなかったしこれもやらなかったな、などと思ってしまうのがミスチルが歩んできた25年の重みでしょう。
今回聴けなかった曲はきっと次のアニバーサリーライブで聴けるものと思って、その日を楽しみにしています。


●関連過去記事●
tonton.hatenablog.jp

『教団X』中村文則

教団X (集英社文庫)

教団X (集英社文庫)


突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。著者の最長にして最高傑作。

又吉直樹さんや西加奈子さんが絶賛し、テレビなどでも取り上げられたことで一躍ベストセラーになった話題作が文庫化されたので読んでみました。
文章は読みやすかったし、面白い部分がなかったわけではないのですが、なんとも評価のしづらい作品ですね。
ストーリーはつかみどころがあるようなないような、という感じで、作者が何を書こうとしているのかがなかなか見えてこないのですが、宗教と量子力学宇宙論を絡めた薀蓄が興味深く読ませますし、教団Xを巡る不穏さに、一体何が起こるのだろうかという興味も引かれるため、リーダビリティは高い方ではないかと思います。
そうかと思えば単調な上に冗長な性描写にはうんざりさせられます。
個人的には、女性視点で書かれているパートでも、性描写に関しては男性目線寄り (作者が男性なので仕方がないのかもしれませんが……) なのが気持ち悪くて苦痛でした。
それでも読み終わってみるとそれほど不快感も悪印象もなくて、なんとなくそれなりに面白かったと思えて、なんとも不思議な読後感でした。


正直なところ、この作品を正しく解釈できたかどうかは全く自信がないのですが、私がこの作品から読み取ったのは、人間がいかに弱く頼りない存在であるかということでした。
タイトルが示す通り、本作はあるふたつの宗教団体とその宗教に集う人々を描いています。
松尾という資産家の老人が率いる団体は、実のところそれほど宗教儀式的なものはやっておらず、あまり宗教という感じはしないのですが、それでも松尾の演説内容やその思想に惹かれて大勢の人が集まってくるさまは、傍から見ればやはり宗教だと思えるでしょう。
それに対し、サイコパスっぽいところのある沢渡を教祖とする教団は、まさにカルト新興宗教そのものです。
性格は全く異なるふたつの団体ですが、どちらもそれを必要とする人を大勢集めているのは、人間が根本的に弱い存在で、その弱さに種類があるからではないかなと思いました。
人間の悩みはさまざまです。
本作の登場人物を見ても、たとえば性についての悩みを抱えている人もいれば、幼い頃に経験したことによるトラウマを抱えている人もいる。
全く悩みのない人などほとんどいないでしょうし、思い悩んだりあれこれ考えたりするのが人間らしさと言ってもいいかもしれません。
そうした悩み迷いながら生きている人にとっての受け皿の一つが宗教なんだなと、今さらのように確認させられました。
他人から見れば理解できないような宗教であっても、それを間違いなく必要とする人がいるからこそ宗教は存在する。
古来から脈々と続いてきた宗教もあれば、時代にあわせて新しく生まれ消えていく宗教もある。
宗教は人間そのものを表すものなのかもしれないな……などと思いました。


そして、もう一つ本作の最初から最後までずっと通して感じたのは、善と悪との曖昧さでした。
本作には一般的には不道徳とされるようなことがいくつか描かれています。
ですが、それを悪だと明快に糾弾するようなことは、最後まで読んでも一切書かれていません。
さらに、沢渡を教祖とする教団はテロを起こしますが、そのテロすらも、明確に悪としては描かれていないように感じました。
それどころかその教団が、たとえばオウム真理教のような凶悪な集団かというとそうではなく、国家や公安といった権力の方が悪に感じられてくるぐらいです。
ただその点についても誰が悪で誰が善かといったような二元論的な描き方はされておらず、そのために余計善悪の区別が曖昧になって、少し混乱するところもありました。
本作が「何が言いたいのかよく分からない」という印象になりがちなのは、この善悪の曖昧さにあるように思います。
テロは明らかに犯罪で、本来「悪いこと」のはずなのですが、本作からは悪が感じられないためになんだかぼんやりした印象のできごとになっています。
沢渡の過去もサイコパス的でこれまた明らかに犯罪なのですが、これも断罪されている感じはありません。
それは、かなりのページ数が割かれている戦争についての記述においても同じです。
ですからどうしても戸惑ってしまうし、不快感を感じたりもしますが、もしかすると光の当て方を変えれば影の向きが変わるように、善と悪も見方によって定義が変わるのかもしれないと思えてきます。
悪だと普段自分が思っていることが断罪されないからカタルシスが感じられないし、自分の価値観がぐらつくような不安感を覚えさせる小説だなと感じました。


そんな不安定な物語ですが、ラストの松尾の妻による演説は妙にポジティブで、その部分だけは救いがあるように感じました。
人間は弱いし、時に過ちを犯したりすることもあるけれど、それでも生きていこうというのが唯一本作におけるはっきりとしたメッセージだと受け取りました。
普段私が読む作品のどれとも毛色が違っていて、ミステリや恋愛小説といったジャンルの枠にも入りませんが、たまにはこんな読書も悪くないなと思えました。
☆4つ。

8月の注目文庫化情報


夏真っ盛り。
暑くて外に出るのが億劫なので、冷房の効いた部屋で読書が気持ちいい時期です。


今月の注目新刊は少なめ。
6月、7月の新刊が豪華だった分、8月はひと休みですね。
私も読みたい本がたくさん溜まっているので、しばらくは積読を消化する日々になりそうです。
『走る?』は走ることをテーマにしたアンソロジーだそうですが、執筆陣が豪華なんですよね。
『花野に眠る』は『れんげ野原のまんなかで』の続編です。
前作はなかなか面白い図書館ミステリだったので、シリーズ化がうれしいです。


それにしても本当に暑い毎日が続きますね。
体調には気をつけて、元気に過ごしたいものです。