tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧』荻原規子


生まれ育った紀伊山地を出て、東京の鳳城学園に入学した鈴原泉水子。学園では、山伏修行中の相楽深行と再会するも、二人の間には縮まらない距離があった。弱気になる泉水子だったが、寮で同室の宗田真響と、その弟の真夏と親しくなり、なんとか新生活を送り始める。しかし、泉水子が、クラスメイトの正体を見抜いたことから、事態は急転する。生徒たちは特殊な理由から学園に集められていた…。大人気RDGシリーズ第2巻。

学園ファンタジーのシリーズ第2作目です。
いよいよ物語が本格的に動き始めました。


紀伊山地の奥、世界遺産に登録されている玉倉山で生まれ育った鈴原泉水子。
母から受け継いでしまった「姫神憑き」という特殊能力を持った世間知らずの泉水子は、中学卒業後、ついに故郷を離れて東京の鳳城学園高等部に進学します。
そこには一足先に中等部へ転入していた相楽深行がいましたが、相変わらずの態度の彼とは仲良くなれそうもありません。
それでも寮で同室になった少女・宗田真響(まゆら)と仲良くなり、彼女の導きで少しずつ学園生活に馴染んでいく泉水子でしたが、実はこの学園にはある秘密が隠されていて…。


泉水子が外の世界へ出たことで、またぐっと物語の幅が広がったような気がします。
とは言え、今回の物語の舞台はほとんど鳳城学園の外へ出ることはありません。
それでも東京の学校へ進学するというのは、生まれ育った山からほとんど出たことがなかった泉水子にとっては大きな進歩。
不安に満ちた学園生活のスタートでしたが、真響というよい友人ができたおかげで、なんとかスムーズに新しい世界へ入っていきます。
1作目での泉水子の世間知らずっぷりや頼りなげな様子を知った読者としては、なんだか泉水子の親になったかのような気持ちでほっとしてしまいました。


しかし、人間ではないものが見えるという特殊な能力を持つ泉水子であり、鳳城学園自体が特殊な事情を持った学校であるがゆえに、息をつく間もなく「事件」が起こります。
泉水子の今後の学園生活が波乱に満ちたものになるであろうことを暗示するような奇怪な出来事の数々が物語を盛り立て、一体どうなっていくのかとハラハラさせられました。
このシリーズだけでなく、「勾玉三部作」でもそうでしたが、荻原さんは日本の実際の歴史や、古来の文化に基づいたものをファンタジー要素として現代の物語に絡めているので、日本人としては非常に親しみやすく、とっつきやすいものになっていると思います。
深行は山伏修行をしていますが、修験道陰陽道、さらには能楽・歌舞伎といった芸能事なども絡んできて、日本の文化に深く根ざしたファンタジー世界が創られています。
神社や仏閣といった宗教的な場所も作中にいくつか登場し、物語を深みのある神秘的な雰囲気のものにしています。
西洋のファンタジーも大好きですが、こうした日本の文化や歴史に基づくファンタジーもとても面白いし、少なからず馴染みのある要素が多いので、物語世界の理解もしやすいように思います。


最後は「こんなところで終わっちゃうの!?」というなんとも中途半端なところで終わっており、続きが気になって仕方ありません。
今後泉水子はこの学園でどのように生活していくのか、どう成長していくのか、また深行をはじめとする周囲の人々との関係はどのように変わっていくのか。
シリーズタイトルの「レッドデータガール」の意味するところもようやく示唆され、物語はいよいよこれからなのだという気がします。
次巻も楽しみです。
☆4つ。