tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女』荻原規子


夏休みの終わり、鳳城学園に戻った泉水子は、正門でふと違和感を覚えるが、生徒会執行部として学園祭の準備に追われ、忘れてしまう。今年のテーマは「戦国学園祭」。衣装の着付け講習会で急遽、モデルを務めることになった泉水子に対し、姫神の出現を恐れる深行。果たして終了後、制服に着替えた泉水子はやはり本人ではなく…。物語はいよいよクライマックスへ。姫神から語られる驚くべき事実とは。RDGシリーズ第4巻。

シリーズも4作目に入り、だいぶ核心に迫ってきた感があります。
単行本ではもう最終巻の6巻が出たんですね。
ということはあと2巻、かなり大きく風呂敷を広げたこの作品世界をどのように作者がまとめていくのか、今後の展開が気になるところです。


いろいろあった夏休みが終わって学校に戻った泉水子たち。
学園の空気が少し変わっていることに気付きますが、学園祭の準備で忙しく、それどころではありません。
「戦国」をテーマに大掛かりなイベント準備を進める中で、戦国時代の姫の衣装モデルを務めることになった泉水子は、母の紫子が施した「封印」であるおさげ髪をほどくことになります。
髪をほどいている間は何事もなかったものの、モデルを終えて三つ編みを編み直してから姫神が泉水子に降臨し…。


「戦国学園祭」の準備がいよいよ本格的に始まりました。
模擬店や演劇など、普通の学園祭っぽい部分もあるものの、なにやら大掛かりなゲームのようなイベントも用意されているらしく、まだ詳細は明らかにされていませんが、読んでいて自分も参加するかのようにワクワクしてきました。
この辺りは普通の学園青春小説のようで、このシリーズの魅力の一つだと思います。
その一方で、きな臭い雰囲気も高まってきているのも事実です。
陰陽師や山伏、忍者など、そういったちょっと「特殊な」血筋の者たちが集まっている鳳城学園で、どうやら素性を隠して暗躍している者たちがいるらしいことが分かってきます。
深行(みゆき)と真響(まゆら)、それぞれの家の系譜と能力の違い、立場の違いなどもだいぶ明らかになってきて、泉水子がそこにどのように関わり、それがどのような意味合いを持つのかもはっきりしてきました。
このシリーズにおける「世界遺産に選ばれる」ということの意味も、これまではあまりよく分かっていなかったのですが、ようやくこの巻で少し分かったかなという感じです。
シリーズの最初から感じていたことですが、一見普通の学園小説にファンタジー要素があたかも当然のように絡んでくる不思議さがさらに強まった気がします。
ファンタジーはファンタジーなのですが、陰陽師も山伏も忍者も実在していたわけですし、特に今回は「戦国学園祭」ということで日本の歴史(戦国時代に偏ってはいますが)がクローズアップされ、もはや現実と幻想の境界線がよく分からない状態になっています。
荻原さん、こんな話よく思いつくなぁ。
巻末にあったこのシリーズの広告に「こんな物語読んだことがない!」という文句がありましたが、まさにその通りです。


この巻のクライマックスはやはり姫神の出現でしょう。
かなり緊迫した状況のはずなのですが、泉水子に憑りついた姫神の言動が妙にユーモラスなので思わず笑ってしまいました。
それに振り回される深行の姿も想像すると笑えます。
けれども、よくよく読むと姫神が深行に語った話の内容はやっぱりとんでもなくて、その意味をよく考えるとぞっとしてしまいます。
そして、姫神が出現したことに対して泉水子が思いを吐露する場面では、その気持ちが分かるような気がしました。
確かに自分の知らない間に勝手に姫神が自分の身体を使って何かするなど、年頃の女の子にとっては耐えられないことだろうな、と…。
姫神という存在自体、どういうものなのかまだすべてが明らかになったわけではありませんし、泉水子はさらに大きな悩みと不安を抱えて学園祭の本番を迎えなくてはならないのだと思います。


おそらく次巻で学園祭本番を迎えるのだと思いますが、その時、鳳城学園と泉水子たちに一体何が起こるのでしょうか。
5巻目も楽しみです。
☆4つ。