tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『天国の本屋』松久淳+田中渉

天国の本屋 (新潮文庫)

天国の本屋 (新潮文庫)


さとしはアロハシャツの不思議なおっさんに誘われ、突然天国の本屋でアルバイトをすることになった。
この店の売り物の、朗読サービスを受け持つことになったさとし。
そして緑色の目を持つ少女ユイに恋心を抱く…。
でも、ユイの心は、この世でできた大きな傷に塞がれていた―。
慌しい毎日に押しつぶされそうな貴方にお勧めします。
懐かしさと優しさが、胸一杯に込み上げてきます。

映画化されるから…というわけでもないのですが、地方のある本屋からじわじわと売れて注目された、松久淳+田中渉『天国の本屋』を読んでみました。


さとしは大学4年生。
就職が決まらず、無気力状態になっている時に入ったコンビニで、怪しげな老人に声をかけられた。
気がつくとそこは天国。
さとしは天国の本屋の店長代理にスカウトされたのだった。
あまりのとっぴな展開に戸惑う暇もなく、彼の天国の本屋店長代理の毎日が始まった。


これは大人のための童話。
書評などで「純愛物語」と書かれているけれど、懐かしい何かを思い出させてくれるような、優しいファンタジーです。
天国の本屋で働き出したさとしは、やがて客のために本の朗読もするようになります。
客がさとしに朗読してもらいたがる本は、彼らが天国に来る前、すなわち生前の思い出の1冊なのだといいます。
いろんな書名が挙がるので、本好きな人なら思わずにやりとしてしまうこと間違いなしです。
特に物語の鍵となっている1冊は、誰もが一度は読んだことがあるであろう、あの名作童話。
私も昔母に読んでもらったっけ…と思い出したり。
誰にでも幼少の記憶に残る思い出の1冊というものがあると思いますが、この作品を読むと、もう一度あの思い出の1冊を読みたくなります。
30分くらいあれば読めて、綺麗な挿絵もついているので、忙しい時に気分転換に読むのもいいかもしれません。