tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『斜め屋敷の犯罪』島田荘司

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)


北海道の最北端、宗谷岬の高台に斜めに傾いて建つ西洋館。
「流氷館」と名づけられたこの奇妙な館で、主人の浜本幸三郎がクリスマス・パーティを開いた夜、奇怪な密室殺人が起きる。
招かれた人々の狂乱する中で、またもや次の惨劇が…。
恐怖の連続密室殺人の謎に挑戦する名探偵・御手洗潔
本格推理名作。

これから島田荘司作品を3連続で読む予定です。
まず最初は『斜め屋敷の犯罪』から。


舞台は北海道。
ある会社の社長が建てた屋敷は、建物全体が斜めに傾いているという奇妙な洋館だった。
クリスマスパーティーのためにその屋敷に集まったメンバーのうちの一人が殺される。
それは不可能犯罪で…。


奇妙な造りの館、吹雪の夜。
密室殺人、不気味な人形。
警察も首をひねる難事件を鮮やかに解決する名探偵。
謎解き編の前に挿入される、作者から読者への挑戦状。
まさにこれでもか!というほど本格ミステリの王道を行く作品。
ぶっちゃけてしまえばこんな建物あるわけがないわけで、ゆえにこのような殺人も起こりえないのですが、だからと言って非現実的だと片付けてしまうのは野暮です。
むしろこのような非現実性を楽しむのが本格ミステリの醍醐味。
本格ミステリというジャンルに限っては、非現実的であればあるほど面白いように思います。
この作品の場合、設定はもちろん出てくる登場人物も少々非現実的な感じがします。
その筆頭はやはり探偵役の占星術師・御手洗潔ということになるのでしょう。
相変わらずの変人っぷりでところどころ笑わせてくれますが、彼の変人ぶりを存分に(?)味わいたいのなら、どちらかというと『占星術殺人事件』の方がオススメです。


それにしても島田荘司氏の設定の細かさには舌を巻きます。
不可思議な屋敷の構造や密室のからくりなど、よくこんなに凝った設定を考え出せるものですね。
正直、読者への挑戦状を提示されても私のような論理的思考ができない者には難しすぎてさっぱり分からないのですが、何も考えずに解決編を読んで作者の頭のよさに感嘆するだけで楽しいのです。
純粋なミステリの謎解きの面白さが存分に味わえる作品です。