tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ライオンハート』恩田陸

ライオンハート (新潮文庫)

ライオンハート (新潮文庫)


いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。
会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ…。
17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀のパナマ、フロリダ。
時を越え、空間を越え、男と女は何度も出会う。
結ばれることはない関係だけど、深く愛し合って―。
神のおぼしめしなのか、気紛れなのか。
切なくも心暖まる、異色のラブストーリー。

このところ本格ミステリを続けて読んだので、ここで少々息抜き。
恩田陸さんの『ライオンハート』を読了しました。


イギリス、アメリカ、パナマを舞台に、時を越えて、空間を越えて引き寄せられ、巡り会う運命の2人。
繰り返される出会いと別れの末にあるものは…?


タイムトラベルもののラブストーリーは、題材としてはよくあるものです。
北村薫さんの『リセット』とか、村山由佳さんの『もういちどデジャ・ヴ』とか。
しかしこの『ライオンハート』はこの手の恋愛小説の中でもスケールが特に大きいのです。
特に英国史や、絵画に興味のある人には楽しめるのではないでしょうか。
場面描写も非常にリアリティがあって、そのシーンが絵になって目の前に現れるかのようです。
特に戦場のシーンの、空はこんなに青いのに、その下では血みどろの戦いが繰り広げられている、といったような描写が印象に残りました。


タイトルの『ライオンハート』から、ついついSMAPの曲を思い浮かべてしまいますが、実際はケイト・ブッシュのアルバムタイトルから取られています。
また、この作品はロバート・ネイサンの『ジェニーの肖像』という小説のオマージュでもあるそうです。
私はどちらもほとんど知らないのですが、機会があれば手にとってみようと思いました。
さて、「私のライオンハート」はどこにいるのでしょうか?
人は皆、生涯ただ一人の自分の「ライオンハート」を求めてさまよう旅人なのでしょうか…。