tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『3月のライオン (14)』羽海野チカ


夏まつり以降、急接近したあかりと島田と林田。不思議な3人の関係は時にすれ違い、時に重なり合いながら三月町や川本家を舞台に周囲の人々も巻き込んでいく。そして秋も深まる頃、零にとって最後となる駒橋高校の文化祭を迎えるが、奇しくも同じ日に開催される職団戦の会場に零はいた。クラスの出し物に奮闘するひなたと立会人を務める零。それぞれの場でそれぞれの思いを抱えながら過ごす秋の一日が始まる──。

10巻以前くらいまでの、棋士たちの熱い戦いの話から一転して、現在は恋愛メインのストーリーになっているせいか、ほんわかあったかい雰囲気が強調されている感じです。
あかりさん、島田八段、林田先生の三角関係 (と言ってしまっていいのかすら微妙なところですが……) が多少は前進するのかと思いきや全然前進してなさそうなのがもどかしいですね。
このもどかしさ、どこかで読んだぞ……と思いきや、そう、『ハチミツとクローバー』じゃないですか。
そのハチクロの一部の登場人物が、この巻に登場しています。
ハチクロの人物が出てくるということだけは読む前から知っていたのですが、カメオ出演程度かと思っていたら、けっこうしっかりハチクロの後日談的なエピソードが描かれているのでちょっと驚きました。
個人的には懐かしくてうれしかったけれど、『3月のライオン』の読者が全員ハチクロを読んでいるわけでもないだろうし、ここまで『3月のライオン』の物語の中に組み込んでしまうのはどうなのかな、と思わなくもなかったり。
この辺りのさじ加減は難しいところですね。


駒橋高校の文化祭の話は、とにかくひなちゃんがかわいかったですね。
零くんは幸せ者だと思います。
ただ、ひなちゃんが幼すぎるというか、これまた恋愛関係に発展するにはまだまだ時間がかかりそうなところが、やっぱりもどかしい。
脈がないわけではないようなので、零くんには気長に、根気よくひなちゃんのそばにい続けてほしいなと思います。
しかしそうなるとこの作品、いつまでも終わらないのでは?という気がしなくもないですが、その点は羽海野さんのことだから、どこかで急展開がありそうで、今からドキドキです。
ハチクロもスローペースな話だと思っていたら急激に展開が変わりましたからね。
読者は覚悟しておいた方がよさそうです。


ところで今巻で一番うれしかったのは、監修の先崎学さんのコラムが復活していたことでした。
うつ病で休業されていたと知った時にはびっくりしましたが、コラムも毎回楽しみに読んでいた身としては、とにかく無事に帰ってこられてとてもうれしく思いました。
マンガ本編が恋愛ストーリー寄りになって将棋の話が少なくなっているのも、先崎九段がお休みされていた影響もあるのではないかと思うので、この先また熱い棋士たちの戦いもたくさん読めることを期待しています。


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