tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『3月のライオン 8』羽海野チカ

3月のライオン 8 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 8 (ジェッツコミックス)


新人王となった零は様々な人々の期待を受け
宗谷名人との記念対局に臨む。
この対局をきっかけに
零は宗谷の重大な秘密を知ることになる。
一方、島田八段は棋匠戦で初タイトルをかけ
柳原棋匠と死闘を繰り広げていた…
お互いのすべてを出し尽くした勝負の行方は…?
「戦い続ける事」その重さを読者の方に問いかけます。

濃い。
とにかく濃い。
よく羽海野さんがツイッターで「頑張って濃くします!」ってつぶやいておられるのだけれど、「濃さ」にかけては数ある他のマンガの追随を許さないんじゃないかと思うほど。
登場人物たちのドラマが、生き様が、ぎゅっと濃密に詰まっているから、たったの1コマでうわっといろんな感情が押し寄せてきて、笑ったり泣いたり…1巻から変わることなくそういうマンガです。


特にこの巻は、戦い続ける人たちの強さやさみしさや苦しさが一気に襲い掛かってくるようなストーリーが印象的でした。
物語に圧倒されて、呑み込まれて、息が詰まるような感じがしました。
圧倒的な強さを誇りながらも、ある重大な秘密を抱える宗谷名人も。
故郷に錦を飾りたいと、名人を目指して果てのない努力を積み重ねていく島田八段も。
周囲の同世代の友人たちの重い期待を背負って、現役最年長棋士として将棋盤と向き合い続ける柳原棋匠も。
幼い頃からの病を抱えながら、将棋に夢を託す二海堂も。
同級生から受けたいじめの傷を少しずつ癒しながら、新たな生活を始めたちほちゃんも。
そして、彼ら・彼女らそれぞれの戦う姿を目の当たりにし、向き合っていく零くんも。
みんなみんな、戦い続けている。
その終わりがどこにあるのか、分からないまま…。
戦い続ける人の姿は、たとえボロボロで倒れそうでも、みな強くて清らかで美しい。
そう思いました。


そんな濃くて重い物語の中に差し挟まれる、川本家のおいしそうな食べ物や、三姉妹のけなげで明るい笑顔が何とも言えずほっこりさせてくれて、その辺りの絶妙なバランス感覚がさすが羽海野さんだなぁといつも感心しています。
川本家の「半熟玉子☆絶対成功マニュアル」はぜひ試してみたいな。
もちろん、圧力鍋で作ったトロトロの豚の角煮も、冷たくて甘〜い白玉シロップもね。


零くんたちの戦いがどうなっていくのか、これからも目が離せません。
ちなみに私は手帳付きの限定版を買いましたが、この手帳がまた可愛くて手抜きのないさすがのクオリティ。
手帳というかカレンダー付き自由帳という感じで、自由にたくさん文章や絵を書きたい人にはピッタリなんじゃないかな。
でも…もったいなくて使えないかも(^^ゞ
そして、また次巻を首を長くして待つ日々の始まりです。