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tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『3月のライオン(9)』羽海野チカ


高校進学を前に、ひなたは零の通う高校を受験することを決意。零もそんなひなたに勉強を教えながら将棋を指す中で、今の自分にとってひなたの存在がいかに大きいかを自覚し出し…。

※『ハチミツとクローバー』の内容に多少触れています。
致命的なネタバレにはなっていないと思いますが、未読の方はご注意ください。


いや~、着実に巻を重ねていますがクオリティが全く落ちないのはお見事としか言いようがありません。
毎回変わらず泣いたり笑ったり、絶妙な緩急のあるストーリーで存分に楽しませてくれます。


今回は帯に「家族の第9巻」とある通り、家族の愛情の尊さを描いています。
ついに受験を迎えたひなちゃん、宗谷名人と長い付き合いのライバルである土橋九段。
どちらのエピソードも、家族の支えのありがたみを感じさせられます。
お父さんもお母さんも失った川本家ですが、おじいちゃんや伯母さんも含め、家族の絆は失われていません。
そしてそこに零が加わって、さらに結束が強くなっています。
零も両親と妹を失い、義理の家族の元にもいられなくなりましたが、川本家の3姉妹と出会ったことで新たな自分の居場所を見つけました。
零がひなに抱く想いは間違いなく愛情と言えるものですが、それは男女間のものではなく、肉親に対するものです。
なかなか赤の他人に対してそのような愛情を持てるものではないと思いますが、零も3姉妹も互いに家族を必要としていたからこそ、そういう関係を築けたのかもしれないなと思いました。
土橋九段を支え続ける両親も素敵ですね。
「無償の愛」を注いでくれる親の存在は本当にありがたいなぁと思わされました。


また、9巻では『ハチミツとクローバー』を髣髴とさせるエピソードがいくつか出てきたのが個人的にとてもうれしかったです。
ひなちゃんの一つの恋の終わりは、ハチクロ最終話の竹本くんを思い出して泣けました。
それから、「どうして この世は 『愛される者』と 『愛されない者』に 分かれるのか」というのもハチクロで似たテーマが描かれていましたね。
これまた森田兄弟のエピソードを思い出して泣けました。
また、零とひなが「家族」の関係になってしまっていて、そこから「恋」に戻すのは至難の業だというところ。
ハチクロファンなら思わずニンマリしましたよね。
羽海野さん、もう「家族」から「恋」へという関係は描いてるじゃん!と。
ハチクロではその「境界線」ははっきり描かれなかったけど、もしかして今回は…!?と期待せずにはいられません。


相変わらず、脇役たちの描写も丁寧なのがいいですね。
いじめの首謀者だった高城さん、先生に言われたことの意味が、いつか分かる日が来るといいなと思いました。
滑川七段や、再登場の松永七段といった棋士たちも、個性的で気になるキャラクターばかりです。
羽海野さんの療養による連載休止で10巻の刊行は少し遅くなるのかもしれませんが、いつまででも楽しみに待っています。