tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ドリームバスター 3』宮部みゆき

ドリームバスター 3 (トクマ・ノベルズEdge)

ドリームバスター 3 (トクマ・ノベルズEdge)


「赤いドレスの女」では、前巻に引き続いて、OL理恵子が登場。「ちょっと可愛い娘じゃん。何だよ、恥ずかしがっちゃって」―理恵子の耳に響く声。夢の中でマエストロにもらったリストバンドを装着したあの日以来、彼女はまるでプチ超能力者のように他人の心の声を聞き取ることができるようになった。そして、赤いドレスの女の“幽霊”を頻繁に目にするようにも。困惑した理恵子はインターネットである言葉を検索する。“ドリームバスター”と。そこに現れたのは…。他、虐待を受ける少年タカシの夢に潜った凶悪犯の顛末を描く「星の切れっ端し」「モズミの決算」を収録。シリーズの転換点となる第3弾。

宮部みゆきさんのSFファンタジーシリーズ第3弾。
少しずつ話が動き始めた2巻に続き、さらに話が進んで気になる登場人物が増えてきました。


2巻で一番気になった、突然姿を消してしまったリップという少年については、本名と意外な事実が明かされます。
けれども依然として失踪した理由と現在の居所については謎のまま。
シェンはこれ以上首を突っ込まない方がいいと感じているようですが、ここで謎を残したままリップについての話が終わってしまうのなら、読者としてはちょっともやもやが残ってしまうなぁ。
いずれどこかでひょっこり再登場したりするのでしょうか。
そして、こちらも2巻の重要人物だった地球のOL・村野理恵子。
シェンとマエストロとの冒険の果てに少しだけ強くなり、成長した理恵子の姿が描かれます。
理恵子の身に起こる不可解な出来事に、どうなることやらと思いましたが、どうやらこちらも一応の決着を見た様子。
でも理恵子に想いを寄せる(?)男性が登場したりして、やはり今後も気になる人物です。
シェンやマエストロとまた会いたいという理恵子の願いが叶うといいなと思います。


そしてこの巻で新たに登場した人物としては、新米ドリームバスターのスピナーが気になります。
病気の母の治療費と、弁護士志望の妹の学費を稼ぐためにドリームバスターを志したという、家族思いな彼。
けれども、ドリームバスターとしての初仕事がショッキングなものであったせいか、彼自身の正義感が強すぎるせいか、スピナーは結局ドリームバスターを辞めて姿を消すことになります。
何やらちょっと胡散臭い集団と関わっているらしいスピナーが、今後どのように物語に関わってくるのか気になるところです。
それからシェンたちが出会ったD・P(ドリーミング・パーソン)のタカシ。
親から虐待を受けているタカシが作り上げた夢の世界の様子がとても切なかったです。
そんなタカシに同情し、何とかして守ろうと奮闘するテーラの脱走死刑囚・モズミが最後に取った行動も切なかった。
彼らの話ももうこれで終わったのだろうけれど、シェンが願ったように、タカシが少なくとも今までより悪くなることはない人生を歩んでいくさまを、またどこかでちらりとでも読めるとうれしいなと思いました。


ついでにもう一人挙げるなら、最後の話に登場した田舎娘のカーリンが可愛い!
一気にお気に入りキャラになりました。
シェンの口の悪さにも負けない、度胸の据わったところがいいですね。
自分のことを「おら」と呼ぶ訛り丸出しの言葉遣いもなんだか可愛い。
シェンとはいいコンビになりそうな気もしますが…はてさて。


3巻も2巻から引き続き伏線を張り続けているという印象ですね。
もっと本格的に話が大きく動き始めるのは次巻以降でしょうか。
と言っても単行本もまだ4巻までしか出ていないようだし、宮部さんにはぜひ頑張って続きを書いていただきたいものです。
宮部さんらしい壮大な大作になるといいなぁ。
☆4つ。




♪本日のタイトル:B'z 「Calling」 より