tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『嫌われ松子の一生』山田宗樹

嫌われ松子の一生 (上) (幻冬舎文庫)

嫌われ松子の一生 (上) (幻冬舎文庫)


嫌われ松子の一生 (下) (幻冬舎文庫)

嫌われ松子の一生 (下) (幻冬舎文庫)


30年前、中学教師だった松子はある事件で馘首され故郷から失踪する。
そこから彼女の転落し続ける人生が始まった―。
一人の女性の生涯を通して愛と人生の光と影を炙り出す感動ミステリ巨編。

これはミステリか…?とか、「感動巨編」は言い過ぎじゃ…?とか、そういった疑問はとりあえず脇に置いておいて(笑)
ジェットコースターのように非常に勢いのある展開で、その勢いに引きずられるようにして読みました。
主人公・川尻松子は中学校の教師で、頭も容姿もよく、生徒たちの憧れの存在でした。
ところが、修学旅行の下見と称した校長の仕掛けた罠にはまり、校長に乱暴されかけたことから、彼女の人生はどんどん坂道を転がり落ちていきます。
教師を首になり、ろくでもない男におぼれ、風俗嬢となり、犯罪に手を染め…。
その凄まじい転落ぶりに圧倒されっぱなしでした。
風俗嬢の仕事ぶりや刑務所の中の様子など、まっとうな道を歩んでいる人には無縁の世界を垣間見ることができてそれなりに興味深かったです。*1
ただ残念なのは、タイトルの「嫌われ松子」というのが弱かったかな。
もっとどんな風に嫌われていたのかが説明されているとよかったのですが。


そして、この作品の「感動」の部分を支えているのが、もうひとりの主人公であり、松子の甥である笙(しょう)の物語です。
笙は伯母の松子が暴行を受けた上殺されたことを知り、恋人の明日香と共に松子のことを調べ始めます。
最初は軽薄でお気楽な大学生という印象なのですが、松子の転落人生を徐々に知っていくにつれて成長していく姿が松子とは好対照で印象的です。
松子の人生を知ることがなければ、笙はそのまま明日香の本当の大切さに気付くこともなく、ただだらだらとお気楽な大学生活を送り続けるだけだったのではないでしょうか。
甥である笙に成長のきっかけを与えたということ、それが松子の転落人生が残した「意味」だったのでしょう。
ラストはやりきれなさが残りますが、この笙の成長ぶりが唯一の救いです。
ストーリー的には勢いがあり読ませますが、期待した「感動」が少なく、私個人としてはちょっと苦手な題材だったこともあり、☆の数は3つにします。


ところでこの作品は映画化されるそうですが、松子役は中谷美紀さん!?
かなりイメージが違うなぁ…松子って正直汚れ役ですよねぇ。
というかこの作品を原作に忠実に映像化したら年齢制限がつくと思うのですが、その辺はどうなるんだろう…(^_^;)

*1:ただまあ、題材が題材なのでそういうのが苦手な方はご注意を…