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tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『9の扉』


執筆者が、次に書いて欲しいお題と共にバトンを渡す相手をリクエスト。猫→コウモリ→芸人→スコッチ→蜻蛉→飛び石→一千万円→サクラ…。一見バラバラなお題と、それぞれが独立したストーリー。けれど、そこには想像もつかないような繋がりが生まれて―!?凄腕ミステリ作家たちの個性と想像力が炸裂する!不思議あり、黒い笑いあり、どんでん返しあり、ほっこりあり。予測不能で心躍る化学反応を、どうぞご堪能あれ。

9人のミステリ作家によるリレー小説短編集です。
執筆者が次の執筆者とお題を指定してどんどんバトンをつないでいく、というなかなか面白い趣向の企画ですが、何と言っても執筆陣が豪華!
ベテランから比較的若手まで実力派が揃っているので、安心感がありました。


ただ、リレー小説とは言っても、物語は完全につながっているわけではありません。
貫井徳郎さん→歌野晶午さんのところは同じ登場人物と同じ設定が使用された、完全に続き物のストーリーになっていました(貫井さんの作品の続編を歌野さんが書いたという構図です)が、それ以外は基本的にすべて独立した話になっています。
それでも自分より前の執筆者が書いたモチーフや表現をさりげなく取り入れている作家さんがいたりして、全体として見ると不思議なつながりのある短編集に仕上がっています。
さりげなく散りばめられた各作家さんの遊び心を発見するのが楽しかったです。
そういう意味ではトップバッターの北村薫さんや二番目の法月綸太郎さんの作品はそういう楽しみ方ができず、ちょっとさみしかったかな。
バトンがつながっていくにつれてどんどん面白みが増していきました。


個々の作品で特に好きなのは、鳥飼否宇さんの「ブラックジョーク」と麻耶雄嵩さんの「バッド・テイスト」。
この2作品も続けて読むとだんだんつながりが見えてきて、「おおっ」となります。
貫井さんの「帳尻」と歌野さんの「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」は続きものとしてよかったのはもちろん、それぞれ独立した作品としても、どちらも面白かったです。
辻村深月さんの「さくら日和」はラストが好き。
なるほど、ここでそれが出てくるか!とうならされました。
心温まる展開が、執筆陣の中の紅一点らしくて、とてもよかったです。


一つ一つはとても短い作品でしたが、その短さの中にもそれぞれの作家さんの持ち味や個性が見えて楽しかったです。
普段あまり読んだことのない作家さんも読めて満足。
☆4つ。
殊能将之さんのプロフィール紹介のラストに「2013年、逝去」とあるのには、知ってはいましたが悲しい気持ちになりました…。
もっと作品を読みたかったなぁ。
最後に、全執筆者リストを。
北村薫さん、法月綸太郎さん、殊能将之さん、鳥飼否宇さん、麻耶雄嵩さん、竹本健治さん、貫井徳郎さん、歌野晶午さん、辻村深月さんの9名です。