解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。
共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。
捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。
警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する――。
『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』『マスカレード・ナイト』と続いてきた「マスカレード」シリーズの第4作が登場しました。
木村拓哉さんと長澤まさみさん主演の映画でもおなじみの本シリーズは、「ホテル・コルテシア東京」という大きなホテルを舞台に刑事とホテルマンがタッグを組んで事件発生を未然に防ぐべく奮闘する物語です。
今回もおなじみの新田浩介警部がコルテシア東京で潜入捜査を行うことになります。
二度あることは三度ある、とはいうものの、そんなに何度も同じホテルに同じような危機が迫るか?――という疑問は当然湧くものの、そんな細かいことは気にしてはいけません。
シリーズお約束の様式美というものです。
ですが、敏腕ホテルマンの山岸尚美は前作『マスカレード・ナイト』のラストでロサンゼルスに発ち、現在もそちらで働いているはず。
あれ、4作目にしてタッグ解消……?とちょっと不安になりましたが、もちろんそんなことはありません。
ちゃんと尚美も登場します。
新田と尚美のバディあってこその「マスカレード」シリーズですからね。
再びホテルマンに扮することになって戸惑う新田、ロスでの研修を経てさらにパワーアップした尚美。
正義感が強い刑事と、生真面目すぎるほどにまっすぐなホテルマンというふたりの姿は変わっていません。
さらに警視庁側は稲垣や本宮、能勢、ホテル側は藤木といったおなじみの面々も登場し、シリーズファンとしては安心感たっぷりで物語に没入できます。
そして今作では警察側の人物として新たに梓警部という女性刑事が登場し、早速その優秀さを存分に発揮しています。
ただ、事件解決のためならば手段を選ばないという冷徹さを持つ彼女は、当然ホテル側の事情よりも捜査が最優先です。
優秀ではあるもののトラブルメーカーになりそうな気配を漂わせる梓を加えて、新田たちの潜入捜査は進んでいきます。
今回の事件は、単独の事件と思われていた3つの殺人事件に意外な共通点が見つかったことから始まります。
それは、いずれの事件においても殺された被害者が過去に人を死なせていたことでした。
さらに、被害者が死なせた人物の遺族が同じ日にコルテシア東京に宿泊することが判明、彼らが十分に裁きを受けなかった人物に対する恨みを晴らすために交換殺人を行ったのではないかと考えた警察は、コルテシア東京で新たな事件を起こそうとしていると考え、それを阻止するために潜入捜査をすることになったのです。
日本では犯罪者に課される刑罰がその罪の重さに対して軽すぎるのではないか、というのは誰しも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
私もそのひとりなので、遺族たちの思いや考え方は十分に理解できました。
でも、だからといって自らの手で恨みを晴らそうというのは間違っている。
新田たちが彼らを止めてくれることを願いながら読んでいくと、事件は当初考えられていたものとは異なる構図を見せ始めます。
終盤の急展開で明らかになった真相は、予想していたよりもずっと痛ましいものでした。
だからこそ、新田が真犯人に対してかける言葉に救われました。
罪を償うというのは口で言うほどに簡単なことではありませんが、それでも償うために生きていかなければならない。
刑事として数々の殺人事件に向き合ってきた新田だからこその思いがこもった言葉に、胸を打たれました。
その言葉が暴走しがちな梓警部の考え方をも変え、非常にすっきりと気持ちの良い結末でした。
事件らしい事件がなかなか起こらないので途中の盛り上がりに欠けるのが難点ではありましたが、シリーズものならではのお約束展開やおなじみの人物たちの人間関係を楽しむことができました。
そして結末を見ると、これはもしかしてここでシリーズ終了?とも思えるのですがどうでしょうね。
前作でも尚美がコルテシア東京を離れたことで完結かなと思いきやこの4作目が登場したわけなので、まだわかりませんが。
もし5作目があるとしたら、新田と尚美の新たな関係性を読むことができそうで、期待しすぎずに待っていようと思います。
☆4つ。
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