tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『レイクサイド』東野圭吾

レイクサイド (文春文庫)

レイクサイド (文春文庫)


妻は言った。「あたしが殺したのよ」―湖畔の別荘には、夫の愛人の死体が横たわっていた。四組の親子が参加する中学受験の勉強合宿で起きた事件。親たちは子供を守るため自らの手で犯行を隠蔽しようとする。が、事件の周囲には不自然な影が。真相はどこに?そして事件は思わぬ方向に動き出す。傑作ミステリー。

ううむ、なんとも後味の悪い結末、というか気分の悪い小説でした…。
作品としての出来が悪いと言っているのではありません。
すいすい読めて、謎解きも十分考えられていて、さすがは東野さん、読みやすさはピカイチ。
しかし題材のせいなのか、どうにも読んでいて気分が悪いのです。
まず登場人物が全員好きになれない。
どの人物も狂っています。
極悪人というわけではないですが、人間として大事なねじが何本か抜けてしまっているのではないかと思うような、嫌な人間ばかりです。
自己中心的で身勝手で不道徳。
一見主人公の俊介だけはまともな常識人のように見えますが、よく考えてみたら彼も他の人物と大して変わらないかも。
子どもも登場しますがこれまた可愛さのかけらもない。
ラストのある子どもの行動だけは救いだったけど…。
やっぱり「中学受験」というものが絡んでいるせいなのでしょうかね。
東野さんって中学受験否定派なんでしょうか。
こんなに「受験」を悪いイメージで書くと、塾や私学関係者から苦情が来ないか心配です(笑)
ラストの俊介の「選択」もなぁ…その選択はやっぱりあかんやろ、何か間違ってるやろ、と突っ込みたくなってしまいます。
でもそんな読者の感情さえも、東野さんの場合は計算づくで書いてそうで怖い…。


東野さんの長編にしては短くてすぐ読めるし、文章の読みやすさと無駄のなさにおいては超一流なので、悪い評価はつけたくありません。
でもこの気分の悪さは…ちょっと人には勧めにくいなぁ。
☆3つ。