tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ALONE TOGETHER』本多孝好

ALONE TOGETHER (双葉文庫)

ALONE TOGETHER (双葉文庫)


「ある女性を守って欲しいのです」
三年前に医大を辞めた「僕」に、脳神経学の教授が切り出した、突然の頼み。
「女性といってもその子はまだ十四歳…。私が殺した女性の娘さんです」
二つの波長が共鳴するときに生まれる、その静かな物語。
『MISSING』に続く、瑞々しい感性に溢れた著者初の長編小説。

医大を中退し、不登校児を集めた塾でアルバイトをしている柳瀬にある日、思いがけない人物から連絡があった。
それは、医大時代の恩師。
恩師は柳瀬に「私が殺した女性の娘を守って欲しい」と頼んできた…。


う〜〜〜ん、これって結局、「特殊な能力を持つがゆえに宿命のようなものにとらわれた青年が、1人の少女を救うことで自らの能力と折り合いをつけ、愛する人と共に生きていく決意をする物語」ってことでいいの??
すいません、私の読解能力のなさゆえか、イマイチよく分からなかったんです…。
ミステリでもないし、恋愛小説でもないし、青春小説とも言いがたい。
純文学っぽい感じ(純文学をそれほど読んだことのない私が言うのはおかしいのですが…)。
どうも主人公のセリフがいちいち理屈っぽくて理解しづらかったです。
地の文は簡潔で感情を抑えた文章で読みやすいのですが…。
この物語のポイントとも言える「主人公の特殊能力」についても、結局最後までよく理解できませんでした。
宮部みゆきさんの『クロスファイア』に出てくる木戸浩一の「押す」能力と似たようなものかとも思ったのですがちょっと違うような気がします。
もう少し説明が欲しかったですね。


短編集『MISSING』でも感じたことですが、この作家の作品にはかなり独特の雰囲気があります。
よく比較される乙一さんの作品のような切なさやあたたかさはありません。
とても淡々としていて、終始重苦しいムード。
まるで、今にも降りそうで降り出さない、空一面を覆う厚くて黒い雨雲のよう。
ラストは一応ハッピーエンドのはずなのに、この重苦しいムードは変わることがありませんでした。
きっと好きな人はかなり好きな雰囲気なのだと思います。
ですが、どうも私には合わなかったようです。
もう少し明るいさわやかな話が読みたいです。