tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ここはボツコニアン4 ほらホラHorrorの村』宮部みゆき


毎度おなじみ「長靴の戦士」ピノとピピが迷い込んだのはホラーゲームのボツ世界!そこは、なぜか三角錐の頭をした人々が支配するなんだか怖いような怖くないような村。どうにかこうにか村を脱出して二人が辿り着いたのは、住民がすべて偽者になっている街だった。おいおい、今度はSFか!?ゆる系RPGファンタジー第4巻はホラーからSFまで、禁断と掟破りてんこ盛り。負けるなピノピ!

ここのところちょっと重いストーリーの本ばかり続けて読んでいたので、ここで一息入れようと手に取ったのが「ボツコニアン」シリーズ4作目の本作。
さすがはゆるゆるファンタジー、期待通り気軽にさらりと読むことができて、気分を変えることができました。


完結が近づいてきたためか、少し展開が速くなった気がします。
3巻から続くホラーゲームネタの話は、実際のホラーゲームとは違ってそれほど絶体絶命な大ピンチに陥るようなこともなく、わりとあっさりクリアした印象でした。
舞台となる街が、ゲーム開発会社の資金不足によって途中で開発が止まってしまったゲームのボツネタだというのがなんだかリアルです。
実際に開発中止に追い込まれるゲームの中にはメーカーの業績不振が原因のものも少なくないんじゃないかと思います。
ちょっと切なさが漂うボツネタ世界でしたが、登場する村人たちや、二軍三国志の世界で出会った郭嘉さん、頼りになるタバサ姐さんなど、愉快で賑やかなキャラクター揃いでとても楽しく読めました。
ピノピもそれぞれ武器や魔法を手に入れてレベルアップして、ますますRPGの主人公らしくなってきました。
ホラーゲームは完全に守備範囲外の私ですが、全く問題なく楽しめてホッと一安心。


で、ホラー村の話が終わった後は、回廊図書館ならぬ「カイロウ図書館」にピノピが出かけていくというサブイベントが展開されるのですが、これがサブイベントと言いながらけっこう長いというのが笑えました。
宮部さんも自分で自分にツッコミを入れて、しかも「なんなら書きましょうか、四千枚。」とか言っちゃう始末。
それだと一体完結までに何年かかっちゃうのでしょうか……。
宮部さんファンとしては、さすがにほどほどで切り上げて他の作品も書いてくださいと言いたくなります。
宮部さんの筆が乗ってきた理由は、期間限定のNPCだったはずのポーレ君が、ピノピの友達という以上の活躍をし始めたからです。
頭がよくて探求好きのポーレ君は、主人公クラスではないものの確かにRPGの仲間ポジションとして理想的なキャラクター。
主人公ひとりで冒険するRPGがないわけではありませんが、やはりRPGの醍醐味のひとつは仲間を得てパーティーを組むことにあると思います。
そりゃ宮部さんの筆も絶好調になるというものです。
そんなサブイベントから続く形で、ストーリーは今度はSFゲームの世界へ突入します。
SFゲームも私はよく知らない (SFチックなRPGなら多少遊んだことがありますが) のですが、知能を持ったロボットたちの話なので、最近話題のAIを想起させて興味深いです。
意外と最先端を行っている (?) 物語なのかもしれません。


それにしてもこの4巻は映画ネタが多かったです。
私はほとんど分からないネタばかりで、もう気にせず流し読みするようになってしまいました。
ネタが分かればもっと楽しめるのかなと思うと私はよい読者ではなさそうですが、ピノピの冒険という本筋には関係ないのでいいのかな、というのが正直なところです。
そんなことを言っている間に早くも次は最終巻。
まだいろいろ謎を残しているので本当にあと1巻でちゃんと話が終えられるのか?という疑問もありますが、それはもう実際に次巻を読んで確認するしかないですね。
ピノピの運命を最後まで気楽に見届けたいと思います。
☆4つ。


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