- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/10/14
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
多くの時間と労力を費やしていながら、なぜ日本人は英語が苦手なのか?それは勉強の仕方が間違っているからだ。英会話学校の無駄、話すことに力点を置く間違いなど「方法の誤り」を指摘しつつ、著者の経験に基づく効果的な学習法を開陳。学生からビジネスマン、シニア世代まで、英語に自信をつけたい人必読。
文庫落ちしたので買ってみました。
内容は仕事において英語が必要とされているビジネスマン向けに英語の勉強法を指南するもので、初級者〜中級者向けと思われますが、アメリカの地名の話や数式の英語での読み方や『若草物語』におけるエイミイの間違い英語などのトリビア的なネタが満載のコラムが面白く、英語の勉強に適切な映画やインターネットサイトの紹介も多いので、上級者にも十分楽しめる内容になっているのではないかと思います。
野口さんの主張は、「実用英語の勉強は、聞く練習に集中すべきだ」というもの。
これ、私も正しいと思います。
当たり前のことですが、いくら単語や表現を覚えて言えるようになったところで、相手の言っていることが聞き取れなかったら会話は全く成り立たないのですから。
話す方は、多少たどたどしくても、不自然な表現があっても、発音が怪しくても、相手(ネイティブスピーカー)も「日本人だからしょうがないな」と思ってじっくり聞いてくれるので(「日本人は英語が苦手/嫌い」と英語を話す国の人々に思われているのは悲しいですが、こういう面ではいいこともあるかも)、一生懸命話そうとしさえすれば、けっこう何とかなるもんなんですよね。
ところが聞く方はそうはいきません。
「ゆっくりしゃべって」と相手に頼むこともできますが、いくらゆっくり話してもらったところで今までに実際の発音を聞いたことのない単語はどうあがいても聞き取れません。
また、話すスピードが遅いと却って分かりにくい場合もあります(一文が複雑で長い場合、スピードが遅いと最初の方に話されたことを覚えていられなくて結局何を言っていたのか分からない)。
聞き取れるようになるには、ひたすら大量の英語を聞くしかないと思います。
そのよい方法については本書に丁寧に解説されていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
私がこれまでの英語学習の中で出会った多くの素晴らしい先生たちもこの本に書かれているのとほぼ同じようなことをおっしゃっていたので、たぶん本書に書かれている英語勉強法はほぼ「正解」なのだと思います。
本書に書かれていることはほとんどは納得のいくことばかりでしたが、少しばかり気になった箇所をあげてみます。
- 「学校の英語では、『have動詞の疑問形や否定はbe動詞と同じで、単に動詞と主語の順を逆にしたり、notをつけて言う』と習った。しかし、アメリカ英語では、そうした言い方をせず、Do you haveとか、I don't haveと言う。」(153ページ)
- 「学校英語では、let usは習ったが、let meは習わなかったと思う。」(159ページ)
いや野口さん、ご自分が受けた英語教育を基準にしないでください…って感じなんですが。
あまりに古すぎるよ。
1つめのhave動詞(これ最初は完了形のことかと思ったんですが、普通に「持っている」の意味の一般動詞のhaveですよね)の件ですが、野口さんの世代(1940年代生まれ)が学校で習ったのは確実にイギリス英語でしょうから上記のように習ったのでしょうけど、アメリカ英語を習っている今の世代(40代以下かな?)はこんなの教わってないですよね…(知らない人も多いのでは?)。
ためしに"have you any"でググってみたら、検索結果142万件で"Have you any ideas?"とか"Have you any other suggestions?"とか普通に出てくるし、特にイギリスのサイトに偏っているわけでもない感じなので、意外と普通に通じるのかも?
そういや私の英語学校の先生も"Have you any questions?"って言ってるな…(イギリス人の先生だから当たり前?)。
アメリカ英語世代の私は中学や高校の英語の授業ではこんな表現習わなかったけど、別に普通に受け入れちゃってますねぇ(笑)
let meの方は…これ、習いませんでしたっけ…?
中学ではどうだったか忘れましたが、高校の教科書には普通に出てきていたような気がするんだけど、気のせいかな〜(汗)
こういう、「自分が基準」の古い知識が多少見られるのが気になりました。
この本を読むのは20代から30代くらいの若いビジネスマンが多いんじゃないかと思うので、もう少しその辺りのことを考慮して今の英語教育事情を詳しく調べて書いて頂きたかったです。
「中学の英語の教科書のテキストは全く面白くない」とも書かれていますが、最近の教科書はだいぶ改善されててそう完全否定されるほどではないですよね〜…。
こうした古い認識も散見されるものの、やっぱり50年にもわたって英語を勉強されてきた人の言葉には重みがあります。
インターネットはおろか、カセットテープすらない時代に特に英語を専門とする学校に通うこともなく、ほぼ独学で英語を身につけているのですからやっぱりすごいと思いますね。
今はネットがあるから、「この表現はどういうときに使うのかな?」と思ったらGoogleの検索窓に入力して検索ボタンを押すだけで山のような例文が一瞬で出てくるし、海外の新聞記事や著作権切れの古典名作もタダで読める(上述の『若草物語』もネット上で無料で読めるそうです)し、ポッドキャスティングやネットラジオでいくらでも無料の音声データが手に入るし(しかも動画もスクリプトも付いてきたりして)、度胸さえあればスカイプや音声チャットで知らない外国人と英語で話をすることもできる。
これだけ手軽に英語に触れられる機会があふれているので、英語を勉強しないというのはただの「やる気のない人」で片付けられてしまうのが現代の英語学習者のつらいところではあります。
野口さんが本書で「今の学生の方が環境は恵まれているのに英語の実力は我々の世代よりずっと低い」と嘆かれるのももっともなことですが、逆にこれだけ英語があふれているから本腰を入れて勉強しないのかもしれないなとも思いました。
たぶん、英語に対する「渇望感」みたいなものが、野口さんの世代の人たちにはあったんじゃないかな。
もっと英語に触れたい、欧米の文化や考え方を知りたい、理解したい、っていうような気持ちが。
私たちの世代には…確かにあまりないですよねぇ、残念ながら。
アメリカもいまや「憧れの国」ではなくなってきていますし。
現代を生きる英語力を必要としている皆さん!
お互い頑張りましょうね!!