tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『はれた日は学校をやすんで』西原理恵子

はれた日は学校をやすんで (双葉文庫)

はれた日は学校をやすんで (双葉文庫)


「ねえおとうさん、どうして学校は毎日いかなきゃいけないの」・・・くり返し問い続けた思春期のころ。みんなと同じ制服、染めた髪、男の子、きれいな曲と・・・友達が忘れていったタバコとお酒・・・。色んなモノに心が動く。「・・・どうして学校は・・・」あなたは答えがだせましたか?表題作他、西原理恵子の自選作品集、待望の文庫化。

待ってました!の文庫化。
でもちょっと縮小されすぎで文字が読みにくい作品もあったり…。
でも、やっぱり名作は名作なのです。
西原理恵子さんのことを、「絵が下手な(笑)ギャグ漫画家」だと思っている人は、ぜひこの作品を読んでみて欲しいです。
表題作「はれた日は学校をやすんで」は、「どうして学校は毎日いかなきゃいけないの」という子どもの疑問を真っ向から受け止めた作品です。
仮病を使って学校をずる休みすることも、一人で映画を観に行ったり喫茶店に入ったりといいったような、大人たちが子どもたちに禁止している「悪いこと」をすることも、この作品では全く否定されていないのです。
むしろ、「毎日学校に行かなきゃならないなんて、しんどいよね。たまには休んだっていいし、大人が顔をしかめるようなことに首を突っ込んでみたっていいじゃない」と、優しく子どもたちの気持ちを汲み取って、全て受け入れています。
これって、大人にはなかなか難しいことだと思うんですよ。
昔、子どもだった頃には、自分だって学校を休みたい日もきっとあったはずなのにね。
いやいや、大人だってたまには(しょっちゅうだったりして…)仕事や家事をサボりたい日もあるのにね。
それを子どもの視点に立って、子どもの気持ちになって、さらりと優しさや愛情を感じさせる漫画にしてしまう西原さんはすごい。
そして、もっとすごいのはこの作品が小学館の雑誌「小学六年生」に連載されていたということでしょう。
「学校に行かない」ことを認めている、こんな漫画を掲載する小学館の勇気に拍手喝采。
私も、子どもの心にそっと寄り添ってあげられる、そんな大人になりたいです。
こんな素敵な優しい漫画を子どもだけに読ませるのはもったいないので、ぜひ大人の皆さんも読みましょう。
表題作以外の作品も、ちょっとえげつなかったり毒がたっぷり入っていたりもするけれど、胸にジンと響いて涙がこみあげてくる漫画ばかりです。
☆5つ。