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tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ここはボツコニアン5 FINAL ためらいの迷宮』宮部みゆき


“ボツコニアン”をより良い世界に創り変えるため、長く厳しい試練の旅を続けてきたピノとピピ。莢ニンゲンの支配するSFチックな世界から、ついに“ラスボス”の待ち受けるダンジョンへ。彼らは、ボツコニアンと魔王の謎を明かせるのか?あの宮部みゆきの壮大にしてお気楽な人気RPGファンタジーシリーズ、ついに完結!予想をはるかに超える感動のクライマックスがあなたを待っている!

お気楽ゆるゆるファンタジー「ここはボツコニアン」シリーズ最終巻です。
ついにピノ&ピピ (以下ピノピ) がラスボス=魔王と対峙!というRPGでも一番盛り上がる展開ですが、このシリーズは最後まであまりテンションもノリも変わりませんね。
まぁそこがこの作品のよいところですが……。


ピノピは魔王に会うために鍵を探す旅を続けていたのですが、必要な鍵の本数がまだかなり残っているけど、もう最終巻ってページ数が足りないんじゃ、どうするの?と思っていたら、なんともこの作品らしい方法でその難題をクリアしてしまいました。
うーん、ずるい (褒め言葉)。
ラストダンジョン前のサブイベントでは、今までの物語で活躍した (?) キャラクターたちが次々に再登場して、なかなか楽しかったです。
ピノピも新しい武器を手に入れたり、新技を習得したりしてレベルアップ。
確かにRPGではラスボス前に強い装備品を探しに行ったりレベル上げに励んだりするものです。
ついでに過去に訪れた街を再訪して、NPCたちのその後を確かめたりもしますね。
こうしたゲームのお約束をしっかり踏襲しているからこそ、地の文に作者が登場しちゃったり、さらにはその作者がハマっているゲームや映画やドラマの話をしだしたりするような、一見ふざけた小説でも、ストーリーが破たんせずに成立しているのでしょう。


魔王の正体については、1巻からこれ見よがしに張られていた伏線がようやく回収されました。
かなりわかりやすいヒントをもらっても魔王の正体に気付かないピノの天然おとぼけぶりがかわいいです。
ラスボス戦だからといって血みどろの激戦にならないのもこの作品らしくてよかったと思います。
個人的には「ラスボスのことを覚えているゲームが少ない」という宮部さんに共感しました。
確かにラスボスって意外と印象が薄いケースが多いですよね。
宮部さんも挙げているFF7なんかは例外ですが、ストーリー終盤になって突然登場するラスボスに感情移入しろといわれても難しいですし、ラスボス後にさらなる隠しボスが登場するのもいまやお約束になっていて、しかもその隠しボスの強さが尋常じゃないもんだから、ますますラスボスの影が薄くなってしまうのです。
私も宮部さんと同じで十分キャラクターを育ててからラスボス戦に挑むタイプなので、ラスボスにはあまり苦戦しないというのもあって余計に印象に残りません。
名前すらあいまいなラスボスも少なくないですね。
だから思わず作中で読者に向かって「印象に残ったラスボス戦を教えてください」なんて問いかけてしまう宮部さんの気持ちがよく分かりました。


なんだか私の感想まで脱線気味になってしまいましたが、ファンタジー小説だけでなく宮部さんの趣味話も楽しめて、宮部ファンにとってはお得なシリーズでした。
よく分からないネタの方が多かったくらいですが、それでも十分面白かったです。
次は真面目なファンタジーを書く、とのことですが、たまにはこんなお遊び作品もいいんじゃないかなと思います。
☆4つ。


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