tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『神様ゲーム』麻耶雄嵩

神様ゲーム (講談社文庫)

神様ゲーム (講談社文庫)


神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか、謎の転校生・鈴木太郎が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか。神様シリーズ第一作。

決して後味のよい作品ではないということは知って読みましたが、それでも読後頭を抱えたくなるような読後感の悪さでした。
ストーリー的にも、謎解き的にも。
よくこれを子ども向けのミステリ叢書である「講談社ミステリーランド」から出せたなぁと、悪い意味ではなく感心しました。
ヒグチユウコさんのかわいらしい猫の表紙絵にだまされてはいけません。


ネタバレになりそうなのであまり内容に触れることはできませんが、中盤以降から次々に主人公を襲う悲劇の数々は、怖がりだった子どもの頃の私が読んでいたらトラウマになっていそうです。
ラストの一文も、いろんな意味でかなり衝撃的。
その前に繰り広げられていた主人公の推理がかなり納得できるものだったので、てっきりこのまま終わるものと思っていたら、その推理を完全にひっくり返す結末に、思わず「うわあ」と声が出そうになりました。
でも、その提示された結末が示唆する「真相」が、本当に「真相」なのかどうか、明示はされていないのですね。
この作品における神様=主人公のクラスメイト・鈴木君がくだした「天罰」。
そして、「神様が言うことは絶対に正しい」という前提条件。
この2つが揃ってこそ、この「真相」は「真相」たり得るのですが、そもそも「鈴木君は本当に神様なのか」、「神様が下す天罰の本当の意味は何なのか」というところを疑い出すと、また別の推理が成り立つように思えてきます。
鈴木君が示した「真相」が、どう考えてもちょっと無理があるような気がするというのがその疑問の出発点です。
あれこれ自分なりに考えてみましたが、主人公の推理の方が筋が通っていて説得力があるように思うのですよね。
こんなふうに何が本当の真相なのかをはっきりさせない、リドルストーリー的な結末を、子ども向けの作品でやるというのが衝撃でした。
大人でも混乱するこの結末、子どもたちはどのように受け止めるのでしょうか。


事件の描写も、その「真相」として提示されるものも、子ども向けとしてはえげつなく、後味は最悪。
どんでん返しに驚愕はしますが、謎が解けたというカタルシスは味わえず、モヤモヤが残る終わり方。
それでも、自分なりに推理してみたり、想像を広げてみたりするのは楽しかったです。
作者が子どもたちに味わってほしかったのも、そういう本を読みながらあれこれ考えるという楽しみだったのかなと思えました。
自分が親だとして、子どもに読ませたい作品かというと微妙ですが、子ども向けの叢書だからといって子どもにも保護者にも媚びない姿勢は悪くはないと思います。
☆4つ。