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tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~』三上延


静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。
物思いに耽ることが増えた彼女はついにこう言うのであった。必ず答えは出す、ただ今は待ってほしいと。
ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。いわくつきのそれらに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。
脆いようで強固な人の想いに触れ、二人の気持ちは次第に近づいているように見えた。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。
この邂逅は必然か?彼女は母を待っていたのか?すべての答えが出る時が迫っていた。

人気シリーズ5作目。
前作のラストでついに栞子さんに告白した大輔。
さて、彼の想いは叶うのか――?


と言ってももちろんラブコメが主体の作品ではありません。
しっかり古書ミステリとしての基盤があってこその「ビブリア」シリーズです。
今回登場するのは古書に関する雑誌『彷書月刊』、手塚治虫ブラック・ジャック』、寺山修司『われに五月を』の3つです。
一番印象的だったのは手塚治虫の『ブラック・ジャック』でしょうか。
やはり有名な作品ですし、ある程度内容も知っていますから、薀蓄に素直に感心しました。
作者が本当に丁寧に原典を読み込んで、きちんとさまざまな資料にあたって、しっかり調べた上でストーリーを練り上げているのがよく伝わってきます。
だからこそ説得力があり、謎解きとしても面白いのだと思います。
このあたりはもうすっかりこのシリーズの「らしさ」として定着しましたね。
おかげで非常に安定感のある、安心して読めるレベルのシリーズに成長したと思います。


個人的には前作の江戸川乱歩に関する長編が読み応えがあって好きだったのですが、今回また連作短編の形に戻りました。
でもそれが非常にいい効果を生んでいると思います。
実は私は読み終わった後すぐには気付かなかったのですが、あるミスリードが仕掛けられていたのですね。
特に何の説明もされていないのでうっかり読み飛ばしてしまいましたが、よくよく読むと…。
詳細はここでは書きませんが、なるほどうまい仕掛けだなと感心しました。
ミステリの手法としても巧いし、栞子さんとその母親との関係を示すエピソードとしてもうまいなと思います。
あまりあれこれ仕掛けや謎解きを詰め込みすぎていないのも好印象。
そうでなくても大輔と栞子さんとの恋の行方や、栞子さんと母親との関係など、気になるエピソードが満載な作品ですから。
いろんな要素をあれこれ入れている割には、ごちゃごちゃしすぎず読みやすいのがいいと思います。


それにしてもこの結末…憎らしいですね(笑)
早く続きを!と叫びたくなってしまう最後の一文。
物語が終焉に向かって大きく動き出したのを感じます。
最後に待っているのは、笑顔なのか涙なのか。
ますます次巻が楽しみです。
☆4つ。