tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『RDG3 レッドデータガール 夏休みの過ごしかた』荻原規子


学園祭のテーマに“戦国学園祭”が決まり、鈴原泉水子、相楽深行たち生徒会執行部は、夏休みに宗田真響の地元、長野県戸隠で合宿をすることになる。初めての経験に胸はずませる泉水子だったが、真響の生徒会への思惑がさまざまな悶着を引き起す。そこへ、真響の弟、真夏の愛馬が危篤だという報せが届く。三つ子の一人である真澄によって真夏は次元の向こうに取りこまれ、大きな災厄が…。最高傑作、RDGシリーズ第3巻。

少し読書ができない日が続いていました。
ようやく涼しくなってきたので、これからペースを取り戻してまたたくさん読んでいきたいものです。


ということで夏の終わりにゆっくりゆっくり読んでいたのが「レッドデータガール」シリーズ3作目のこの作品。
泉水子はすっかり高校生活にも慣れ、ホームシックになる暇もないような、充実した生活を送っています。
生徒会執行部では、2学期に行われる学園祭の計画を練るために、夏休み中に合宿をするという計画が持ち上がります。
行先は宗田きょうだいの姉、真響(まゆら)が、自らの実家がある長野県の戸隠を提案し、真響の口利きによって格安で宿に泊まれることに。
真響の実家にも招かれ、楽しい時間を過ごして合宿に入った泉水子たちでしたが、ある事件が起こり…。


1作目の頃からは考えられないくらいアクティブになった泉水子に驚かされてばかりの3作目でした。
2作目でルームメイトの真響と共に生徒会執行部に加わった時点ですでに驚きではありましたが、今回はさらに泉水子の成長ぶりがきわだっています。
自分一人で勉強を頑張って、初めての試験で上々の成績を収めたり。
SMFこと、「宗田真響ファンクラブ」が真響や自分を盗撮していたことを知って、抗議するために男子会員しかいないSMFに入会すると言い出したり。
故郷の紀伊に帰るよりも、真響たちとの合宿の方を優先させたい気持ちになっていたり。
真響の弟、真夏に関してある事件が起こった時も、深行がぎょっとするような提案をして、実際に大胆な行動に出てみたり。


こうした大きな変化には、もちろん真響の影響が大きいのでしょうが、泉水子自身がもともと持っていた素質がだんだん表に出てきたという部分もあるのではないかと思いました。
中学生までの泉水子は、自分が本来持っている能力と共に、実家の神社に封じ込められているようなところがあったのでしょう。
故郷を離れ、自分の道しるべとなってくれるような友達と出会って、泉水子は初めて本当の自分を表に出せるようになったのだと思います。
その成長が頼もしい反面、深行たちが指摘するように、まだ自分の能力を把握しきれておらず、危うく感じられるところもあって、大丈夫かな…と思うことも。
現実に、この巻のラストではかなり危険な目に遭うことになります。
なんとか危機は乗り越えるものの、今後また新たな危機に見舞われるのではないかと、ちょっと不吉な予感もする結末でした。


とはいえ、一度危機を経験したことで得たものがあったのも事実。
この経験を糧に、今後さらに成長していけるでしょうか。
ついに登場した「あの人物」のことも、学園に隠された秘密のことも、少しずつ明らかになり始めました。
何やらすごそうな学園祭がどのような行事になるのかも気になります。
4作目も楽しみです。
☆4つ。