tontonの終わりなき旅

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『スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜』羽海野チカ

スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜 (花とゆめCOMICSスペシャル)

スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜 (花とゆめCOMICSスペシャル)


羽海野チカがデビュー当初、各誌に描いた珠玉の短編をついに集約して一冊に…。少年探偵・バレエ・ショートストーリー・エッセイなど様々なジャンルを集めた短編集!

今回はライオン6巻に加えて短編集まで!
10年前の短いお話をいくつか集めたものですが、10年前もやはりウミノ先生はウミノ先生でした。


冒頭のフルカラー短編「冬のキリン」からしてもう泣ける。
これも正味たったの6ページのお話なんですよね。
開始5ページで泣かされた『3月のライオン』6巻といい、羽海野さんの最小限のページ数で読者の心を揺さぶるストーリーテラーぶりには脱帽です。
なかなかこんな漫画家さんいませんよ。
たぶん。


表題作「スピカ」はバレエをやってる女の子と、野球部の男の子のお話。
好きなことに打ち込んでいる姿は、部外者から見るとかっこ悪く見えることもある。
でも、それを部外者が笑う権利など、ありはしないのです。
これって『ハチミツとクローバー』や『3月のライオン』にも共通して描かれているテーマのひとつですね。
好きだからこそ苦しいこともつらいこともある。
でも、好きという気持ちがあるからこそ、人は強くなれるのです。


少年探偵ものの「ミドリの仔犬」「はなのゆりかご」も、羽海野さんらしい、可愛らしくて暖かくてちょっと切ないストーリーで大好きです。
羽海野さんの描く子どもとか動物とかって、すごくかわいいのです。
『3月のライオン』でもつらい場面が続く中、モモちゃんやネコたちの愛らしさがうまいことクッションの役割を果たしてくれていると思います。
「夕陽キャンディ」はBLものですが、抵抗なく読めました。
ウミノ先生って、先生(教師)キャラ好きなのかしら…とか思ったりして(笑)
エッセイ漫画「イノセンスを待ちながら」も素敵でした。


とにかく、読んで絶対に損はしない上質な短編集です。
羽海野チカさんの作品を今まで読んだことがないという人にこそ、ぜひ読んでほしいなと思います。
印税は全額東日本大震災の義援金にされるということなので、被災地支援も兼ねてぜひ。