tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『吐息と稲妻』『他人暮らし』谷川史子

吐息と稲妻 (りぼんマスコットコミックス クッキー)

吐息と稲妻 (りぼんマスコットコミックス クッキー)


紗絵と沢野は大学生。ある日、ずっと好きだった沢野に告白され幸せいっぱいの紗絵。一方、沢野は気になる予知夢を見てしまい…? 他4編を収録した短編集。
【収録作品】星空スイマー/雪の女王/ニジメガネ/春追い/告白物語

他人暮らし (クイーンズコミックス)

他人暮らし (クイーンズコミックス)


純花、頼子、サワは33歳。それぞれバツイチ、独身、主婦と立場は違うが、気のおけない親友同士。ある日、両親が遺した一軒家に暮らす純花のもとに、頼子とサワが転がりこんできて…!? 異なる結婚観を軽妙に描く表題作のほか、亡くなった同僚への想いを描く読切り『秋雨』を収録。
【収録作品】秋雨/告白物語

谷川史子さんの漫画は、新刊が発売されるとついつい買ってしまいます。
女の子も男の子も可愛くて性格もよくて好感が持てるし、ジーンとしたりほんわかしたり、読んでいて気分のいい話が多くて安心して読めるからです。
今回もそんな話。


『吐息と稲妻』はちょっと切ない恋愛ストーリーを中心にした短編集。
どちらかというと「りぼん」で書かれていた初期の頃の作風に近い感じの話が多いので、谷川さんファンなら安心して読める作品だと思います。
ただ、裏を返せばちょっとマンネリ化してるかなと思える部分があるのも事実。
幼なじみ設定もちょっぴりファンタジー(SF?)要素が入っている設定もいいのですが、そろそろちょっと違った方向性の物語も読みたいな、とも思います。
とは言えストーリー運びの巧みさや、登場人物たちのモノローグの切なさや、魅力ある女の子たちの描写はさすがですね。
その辺りには文句の付け所がありません。
私が一番好きなのは、「星空スイマー」かな。
女の子が片想いしているという設定の幼なじみものですが、女の子側と男の子側、両方の気持ちがしっかり描かれているのがよかったです。
どちらの想いも切ないですねぇ…。


『吐息と稲妻』と同時発売の『他人暮らし』は、33歳の元同級生3人それぞれの結婚観を描いた連作短編集。
掲載誌の対象年齢が高いので、『吐息と稲妻』より少し大人向けの話になっています。
離婚して気ままな独身生活に戻った純花。
書道の先生として生計を立てる彼女の家に、ひょんなことから学生時代の友人であるキャリアウーマンの頼子と、新婚ほやほや(のはず)のサワが転がり込んできて、一時的に3人での賑やかな「他人暮らし」が始まります。
ひとりが気ままでいいと感じる純花、結婚願望は強いのについつい仕事を優先してしまう頼子、婚活の末に理想通りの旦那さんをつかまえたはずが、ちょっとしたことで新婚早々大げんかをしてしまうサワ…。
それぞれ立場も考え方も違いますが、どの女性にも共感できるところがあるなぁと感じました。
33歳にもなると打算的にもなるし、「好き」や「愛してる」の気持ちだけでは結婚できない。
年収や職業など、結婚相手の条件は大事だ、という点で一致する3人の結婚観がとてもリアルです。
こういう妙齢の(笑)女性たちの複雑な恋愛・結婚観を描かせると、谷川さんは本当に上手いなぁと感心するのでした。
同時収録の「秋雨」も切なくてよかったです。


どちらも女性ならどこかにきっと共感できるところが見つかる作品。
大人の女性や、女性の心理を知りたい男性におすすめです。