tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ドリームバスター 5 時間鉱山 後篇』宮部みゆき


宣言ではなく、決意でもなく、自然に優しくこみあげてきた感情―あたしは、あたしの人生を生き直さなくてはならない。現実世界でそれぞれの事情で瀕死の状態に陥っているヒロム、キエ、ユキオの三人は、生きる気力を取り戻し、時間鉱山の三つの頂を目指す。シェンはそれを手助けするうちに、行方不明の友人マッキーとようやく出会う。自らの意思でここに残ったという彼もやはり、耐え難い現実ゆえの選択だった。迫り来る火山弾、大ミミズ、漆黒の巨鳥。そして出没する、シェンの母親にして凶悪犯、血まみれローズの“幻影”。やがて、キエ、ヒロムの体温が下がり始めた…。怒涛のクライマックス、「時間鉱山篇」完結。

時間鉱山篇、続きも早速読み終わりました。
後篇はいつも以上に冒険小説っぽく、アクションシーンも満載で、心躍る場面が多かったです。
その一方でしっかり泣かせる場面もあるのは、さすが宮部さん…といったところでしょうか。


時間鉱山はやはり地球人たちが「臨死体験」をする場所でした。
シェンが出会った3人の地球人、ヒロム、ユキオ、キエは、それぞれの事情で生死の瀬戸際におり、時間鉱山に迷い込むことになったのでした。
そびえたつ3つの山を彼らは頂上目指して登り始めます。
それは、たった一つの「生」に戻るための道だから…。


前篇ではヒロムの可愛らしさの虜になっていた私ですが、後篇はユキオとキエがとても印象的でした。
生きたくない、死にたいと願い、その願いに囚われるあまり、他人への配慮も忘れて自分勝手な言動が多かったキエ。
そんな彼女がユキオやヒロム、シェンとその友人マッキーの優しさに触れ、徐々に「生きよう」という気持ちを取り戻していく過程が泣けます。
宮部さんはこういうの書くと本当に上手いんですよね。
そしてユキオが最後に下した意外な決断、これにも泣かされました。
その決断の果ての結末にも…。
ユキオは業務上過失で子どもを死なせたという「罪」を背負い、自殺を図って時間鉱山にやってくることになったのです。
ヒロムやキエとは背負っている事情の重さが違いすぎる。
彼らと同じように簡単には「生き直そう」とは思えないだろうな、どうするのかな、と考えながら読み進めていましたが、その意外な最終決断に驚かされました。
その選択は正しいとも間違っているとも言えないけれど、彼なりの精一杯の前向きな決断だったのだろうと思うと泣けて仕方ありませんでした。


そしてシェンにとってもこの時間鉱山での出来事は大きな意味を持つものだったと思います。
母親である「血まみれローズ」の記憶はないはずなのに、それでも時間鉱山に、シェンの目の前に現れたローズ。
彼女は本当にただの幻覚、幻影だったのか、それとも…。
ラストが気になるところでブチッと終わってしまっているので、ちょっとストレスが溜まります(笑)
ええ〜、これ、どうなるの??
宮部さん、早く続きを書いてよ〜!!
…単行本もこの時間鉱山篇以降、未刊行なんですよね。
確か単行本にして全7巻になる予定とかいう話が当初あったと思うのですが、どうなったのでしょうか…。
とにかくできるだけ早く続きを再開していただきたいものです。
せっかく面白く盛り上がってきたところなのだから。
ということで続編への期待も込めて☆5つ。