tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ドミノ』恩田陸

ドミノ (角川文庫)

ドミノ (角川文庫)


一億円の契約書を待つ、締切直前のオフィス。オーディション中、下剤を盛られた子役の少女。推理力を競い合う大学生。別れを画策する青年実業家。待ち合わせ場所に行き着けない老人。老人の句会仲間の警察OBたち。真夏の東京駅、二七人と一匹の登場人物はそれぞれに、何かが起こる瞬間を待っていた。迫りくるタイムリミット。もつれ合う人々、見知らぬ者同士がすれ違うその一瞬、運命のドミノが次々と倒れてゆく!抱腹絶倒、スピード感溢れるパニックコメディの大傑作。

これは面白かった!!
恩田陸さんの作風の幅広さに感心です。


27人+1匹のそれぞれの日常がまるでドミノを倒していくように次々に繋がっていき、最後には東京駅を舞台に思わぬ大騒動が勃発するというパニック映画風コメディです。
一見何の繋がりもないように思われる全くの他人同士の何気ない行動が次から次へと繋がっていく…という構成は、私が今年最初の読書で読んだ伊坂幸太郎さんの『ラッシュライフ』と同一のものです。
けれども、『ラッシュライフ』にはミステリ的な仕掛けが施され、少し複雑な部分がありましたが、こちらの『ドミノ』は構造は大して複雑ではなく非常に明快です。
ストーリー展開もスピーディーで、ところどころに笑えるネタが仕込まれていたりして、何も考えずに読めて爽快感たっぷり。
非常に純粋な「娯楽」として存分に楽しめる小説です。
話がどこに転がっていくのか気になって、一気に読めます。
ラストも思わずニヤリとさせられますね。


巻末の解説で米原万里さんも書かれていますが、これだけ登場人物が多く、一つの小説の中に複数のストーリーの流れがあって頻繁に場面転換があるにもかかわらず、全く混乱させることなく一気に物語の中に読者を引き込んでいくところがすごいです。
登場人物1人1人が個性的で面白く、エピソードもしっかり描かれていて、ちょっとミステリっぽい要素もいくつかあって、全く飽きるところがありません。
伏線の張り方もお見事ですね。
恩田さんの作品には『ねじの回転』のような考えさせられるテーマのものもありますが、こういうコメディもいいなと思いました。
この作品、映画(または2時間ドラマ?)になったら面白いんじゃないかなと思います。
東京駅に警察官大集合やカーチェイスなど、絵的にとても映えるシーンが多かったので、映像化には絶対向いていると思うのですが…どなたか作ってみませんか?(笑)


とにかく最初から最後まで面白く笑いながら読めて、読後はなんだか気分スッキリ。
心にもやもやが溜まっていて、それを吹き飛ばしたいなぁなんて時に読むといいかもしれません。
東京駅構内図や登場人物紹介が冒頭にあるのも親切で分かりやすいです。
☆5つ。