tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『探偵ガリレオ』東野圭吾

探偵ガリレオ (文春文庫)

探偵ガリレオ (文春文庫)


突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮んだデスマスク、幽体離脱した少年…警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた謎に天才科学者が挑む、連作ミステリーのシリーズ第一作。

これまた「今さら!?」って感じのタイトルですが…。
私、けっこうこういう「読書好きなら当然読んでるでしょ?」っていう本を読んでなかったりするんですよね。
地道にそういうのを潰していきます…(^_^;)


ドラマ化されて話題になった作品ですので詳しい紹介は不要かと思いますが、帝都大学物理学科の助教授、湯川が探偵役となり、友人の刑事・草薙が持ち込む奇妙な事件の数々を科学の知識を元に解決するという短編ミステリです。
ちなみに私はドラマは見ていません。
未読のミステリを先にドラマで見てしまうと、原作が楽しめなくなるので。
福山雅治さんはわりと好きなのでドラマにも興味がなかったわけではないのですが、見ないでおいて正解だったなと思いました。
湯川は佐野史郎さんをイメージして作られたキャラクターだそうで、ちょっと福山さんとはイメージが違いますからね。
ドラマを見てドラマ版湯川のイメージが固まった後に原作を読むのはちょっとつらいかも。
柴咲コウさん演じる女性刑事も原作には登場しません(ドラマに女性刑事を登場させたのは正解だったと思いますけどね。原作はあまりにも華がなさ過ぎる…)。


ただ、福山さんとはイメージが違うとは言え、私はこの原作の湯川助教授、けっこう好きですね。
最初の印象はクール、だったんですが、草薙が研究室にやってくる時に科学の力を使った手品もどきを見せて迎えるなど、なかなかユーモアもありそうです。
科学的な事柄についても、科学音痴な草薙に分かるように説明するという設定になっているおかげで、超文系の私でもよく理解できました。
「物理」という言葉を聞いただけでも嫌悪感が走る(汗)私ですが、湯川先生の講義なら受けてみたいかも…。
超常現象としか思えないような不思議な現象も科学知識で論理的に解き明かしてくれる湯川先生の姿からは、なんとなく京極夏彦さんのキャラクター、京極堂の名セリフ「この世には不思議なことなど何もないのだよ」が連想されました。
もちろん湯川は京極堂とはまったく違うタイプの探偵キャラですが、こんなふうに奇想天外な謎をきれいに解き明かしてくれるタイプの探偵が私は好きなんですね。


本格的科学ミステリというのがとても新鮮ですが、東野さんの作品としてはかなり地味な印象もあります。
特に派手なトリックもなく、科学を謎解きの中心に据えているという以外にはあまり特徴のないオーソドックスな推理小説です。
科学とミステリを融合させるという、(作品発表当時としては)新しい試みだった分、ストーリーとしては馴染み深く分かりやすいスタイルを意図的に選んだのだと思います。
一つ一つの話が程よい長さで気軽に読めて、話のテンポのよさもさすが東野さんだと思いましたが、私はやっぱり人間ドラマを描いた東野作品の方が好きですね。
特に『白夜行』とか『手紙』とか『さまよう刃』とかの読み応えのある長編が好きな方には、この作品はちょっと物足りないかもしれません。
でも同じガリレオシリーズの『予知夢』以降も読むつもりです(『容疑者Xの献身』だけは読了済み)。
そうだ、年末にテレビ放映された映画「容疑者Xの献身」、録画してあるんだ。
早く見なきゃ…。
☆4つ。